段階的に避難解除検討 赤崎・綾里大火 火勢弱まり延焼見られず 大船渡湾側や甫嶺から慎重に判断

▲ 越喜来・崎浜漁港から小石浜や甫嶺などの避難指示区域を見つめる住民=6日午前9時45分

 

 大船渡市赤崎町合足地内で出火し、同町と三陸町綾里の広範囲に延焼した大規模火災は6日、先月26日の発生から9日目を迎えた。懸命の消火活動に加え、5日のまとまった降雨などから焼失面積は2900㌶と変わらず、市災害対策本部は火勢は弱まっているとの見方を示す。約4600人に対しての避難指示が続く中、市は赤崎町の大船渡湾側や三陸町越喜来の甫嶺などの一部解除を検討していることも明らかにした。6日の解除は見送ったが、7日も検討を続ける。(4、6、7面に関連記事あり)

 

緊急消防援助隊を構成する茨城県大隊による三陸町綾里での消火活動(6日午前)=総務省消防庁提供

 5日は、出火後初めてのまとまった降雨となり、大船渡の降水量は26・5㍉を観測。6日は午後6時までで0・5㍉で、日中は厚い雲の間から青空が見える時間もあった。綾里全域と赤崎の広範囲、越喜来の一部区域で立ち入り制限が続いている中、各地では対岸などから現況を確認する住民の姿が見られた。
 三陸町越喜来の崎浜漁港から、避難指示が出ている甫嶺や綾里の小石浜地域を眺めていた東崎浜在住の男性は「(甫嶺地域の)鬼沢出身でもあり、毎日ここに来て見ている。これまでは、甫嶺と小石浜の境あたりがよく燃えていたので、消防の車が張り付いているのも見えていた。きょうは、安心して見ていられる。早く鎮火になってほしい」と願った。
 避難所でも多くの地域住民が早期鎮圧を願った。綾里の宮野地域から越喜来の三陸公民館に身を寄せる鈴木せい子さん(83)は「また晴れてしまって残念ではあるけれど、昨日の雨が良い方向に転んでくれていたらうれしい。少しは消火を後押ししただろうか。もう一雨降ってくれればなお良いが。とにかく今は家の様子を確認したい」と語った。
 赤崎町後の入地域から立根町の市立第一中学校に避難した70代女性は「また雨が降ってほしいし、雨ごいをしたいほどの思い。自宅がどうなっているか心配だし、被害に遭った場所も気の毒だ」と話した。
 6日朝の段階では、前日よりも火勢が弱まったが、小石浜から南側に位置する殿畑地域や、石浜地域、同地域から北西側の熊ノ入地域の各山林から、白煙が確認された。2日ぶりとなった自衛隊などによる空中からの消火活動は、白煙が見られる地域を中心に行われ、全国各地から集まった緊急消防援助隊などで組織する地上隊は全域で巡視、警戒、熱源の確認、残火処理などにあたった。
 鎮圧の見通しについて、6日午前の段階で市災害対策本部は「降雨により、かなり抑止されたととらえるが、地上隊による確認がなされていないほか、いつ再燃・拡大するか分からず、判断ができていない」と説明した。
 同日夕方の時点で白煙が確認されている地点はないが、合足地域の西側、田浜地域、同地域北側の山間部、殿畑地域で熱源が見つかっている。くすぶっている状態で、一般的には倒れた木の裏側や、散水が届かない場所などにあることが考えられ、発火につながる恐れがあるという。
 市はこの日、赤崎町における大船渡湾側の一部地域と、三陸町甫嶺で避難指示解除を検討している状況も明らかにした。赤崎町では大立、永浜、清水、長崎、外口、蛸ノ浦の各地域計467世帯1192人が2月27日から、中赤崎地域に当たる宿、後ノ入、森っこ、大洞、生形、山口の415世帯957人は翌28日から避難指示となり、3月1日には甫嶺東、甫嶺西、上甫嶺の141世帯333人が追加された。
 避難期間が長期化し、疲労の蓄積も懸念される中、市は延焼や白煙等に加え、電気や水道などライフラインの復旧状況も考慮しながら、慎重に判断する方針。赤崎町内については6日も検討したが、永浜地域で白煙が確認されたことなどから見送った。
 同日午前7時現在で、綾里地区の約1150軒と赤崎町の約200軒で停電が続く。水道の断水は配水池別に▽小路(小路、合足)42戸▽綾里(石浜、港、岩崎、野形)437戸▽宮野(宮野、野々前、白浜)293戸▽田浜65戸▽砂子浜28戸▽小石浜38戸▽長崎(長崎、外口)113戸▽蛸ノ浦(蛸ノ浦、清水の各一部)22戸──で計1038戸。いずれも避難指示対象区域で、応急給水は行われていない。
 避難対象は三陸町綾里の全域、赤崎町の13地域、三陸町越喜来は甫嶺の各地域で、計1896世帯4596人。避難所は福祉避難所を含む12カ所に設けられ、6日午後6時現在で1249人=別掲表参照=と、これまでで最多となった。
 巡回している保健師が避難所での生活状況を確認し、福祉避難所に移すケースが増えている。これまで陸前高田市や釜石市、住田町に避難所確保の内諾を得ているが、現状では広域避難の必要性はないとしている。
 親戚宅等への避難者は、同日午前11時現在で3061人を把握。市は引き続き、避難対象住民の安否情報を市地域福祉課(℡27・3111)に寄せるよう求めている。
 渕上清市長は6日午前の会見で、火災抑圧への手応えを示したうえで「5日には、避難所を訪問した。いずれも、避難者や多くのボランティアの運営協力によって、穏やかに過ごしていることを見てとれた。ボランティアや自治体の運営協力に感謝をしたい」と述べた。