一部地域に「普段の生活」 赤崎・綾里大火 中赤崎の避難指示解除 白煙は確認されず 依然3600人超に発令続く(別写真あり)
令和7年3月8日付 1面

大船渡市赤崎町合足地内で出火し、同町と三陸町綾里の広範囲に延焼した大規模火災は7日、先月26日の発生から10日目を迎えた。市は避難指示区域のうち、2月28日から対象となっていた赤崎町の中赤崎6地域への指示を解除。1週間ぶりに自宅に戻った住民は安堵の表情を見せた一方、いまだに避難が続く他地域の住民に思いを寄せ、早期鎮圧を願った。7日は白煙は確認されず、鎮圧に向けて再燃の恐れがある熱源への対応が進む。(6、7面に関連記事)

主要地方道大船渡綾里三陸線も一部で通行止めが解除された=7日午前10時14分
7日に解除となったのは宿、後ノ入、大洞、生形、山口、森っこの6地域で計415世帯957人。午前10時に防災行政無線で告げられ、主要地方道大船渡綾里三陸線は、太平洋セメント大船渡工場から東朋中までの間で通行止めが解除され、家路を急ぐ住民らの車列ができた。
山口地域に自宅がある山口二郎さん(78)は5人暮らしで、避難指示発令後、日頃市町の兄宅に避難していた。解除後すぐに家族全員で戻り、二郎さんは「兄夫婦には迷惑をかけて申し訳なかった。解除されて純粋にほっとしている。やはり家は落ち着く」と笑顔を見せた。
高台に位置し、14年前の東日本大震災では津波被害を免れた。震災時も経験しなかった避難生活を余儀なくされ、「まさか山側から火に襲われるとは思いもしなかった。14年前、避難した方の大変さ、先の見えない辛さを身をもって知った。一日も早く鎮火してほしい」と願いを込める。
野球スポ少に所属する孫の夢翔さん(赤崎小1年)は、避難中も近くの空き地でキャッチボールや素振りを欠かさなかった。「やっと家に戻れてよかった。早く野球がしたい」と、早速、白球を握りしめて小学校のグラウンドへと向かった。
先月28日に避難所が開設された猪川小では、市職員が一部地域の避難解除を知らせると、所々で拍手が起きた。避難者が親類などに電話をしたり片づけを始める姿が見られ、にわかに慌ただしくなった。
森っこ地域に暮らす千葉忠志さん(83)は「ここ数日は食欲がなく、ものを食べてもおいしくなかった。健康のため普段は歩くようにしているが、ここではできなかったので、戻ったら運動したい」と話した。
また、山口地内に構えるあかさきこども園の熊谷ナオコ園長(54)は解除を受け、同園の様子を確認した。「電気や水道も通常通り使えそう。車で消防車両とすれ違うたびに本当に『ありがとうございます』と思っていた。感謝の一言です」と胸をなで下ろした。
同園は避難解除を受け、早期の利用再開を目指す。また、解除に伴い、臨時休校が続いていた赤崎小と東朋中は10日(月)から、綾里小は赤崎小を借りて同日から、再開する見込み。
一部地域での避難指示解除を受け、渕上清市長は7日午前の記者会見で「火災予防には十分注意して生活を再建してほしい。消防団もこれまで出動の機会を得ることなく、出動を望んでいた方も多かったと思う。火災予防に徹した警戒と、本来の消防団の活動が軸になると思うので、期待をしたい。また、被災地域で生活環境が違ってくる中、その違いを埋めていくのがわれわれの仕事。きめ細かく支えたい」と語った。
今回避難解除となったのは、指示対象の約2割。新たな延焼拡大や今後の延焼の恐れがないと判断したほか、地上の消火活動でも支障をきたさない地域となった。引き続き監視などが行われる。
また、検討を進めていた大船渡湾側に位置する赤崎町の南側地域と甫嶺地域では見送られた。南側地域では、再燃の恐れがある熱源が確認されたほか、甫嶺地域では周辺全体で確認に至っていない状況という。
依然として、三陸町綾里の全域、赤崎町の合足、大立、永浜、清水、長崎、外口、蛸ノ浦の7地域、三陸町越喜来は甫嶺東、甫嶺西、上甫嶺の3地域の計1481世帯3639人を対象に避難指示が続く。市災害対策本部によると、まだ「一時帰宅」といった判断もできないという。
避難所は福祉避難所を含む12カ所に設けられ、7日午後3時現在で1039人=別掲表参照=と、前日よりも210人減少。親戚宅など避難所以外での避難者は2376人となっている。
焼失面積は5、6日段階と変わらず2900㌶で、拡大は確認されていない。7日朝の段階では白煙などが確認されず、引き続き再燃の可能性のある熱源の確認を進めている。
熱源は、蛸ノ浦の山間部や外口地域東側、同地域と合足地域の中間部、野々前地域から東側、小石浜地域と白浜地域の中間などで確認され、消火・警戒が続く。鎮圧の見通しに関して、同本部は「気象状況では、強風注意報や乾燥注意報が発表されている。延焼範囲が広範囲に及び、地上から熱源確認ができていない。再燃による延焼の危険性は否定できない。火勢のコントロールができていると認識しているが予断を許さず、『鎮圧まであと何日』という表現はできない」としている。
上空からも全域で熱源の有無の確認が続く。全国各地からの消防関係者で構成する緊急消防援助隊は、集落周辺の警戒や、山間部付近での熱源確認を行っている。9日から地元消防団による活動も視野に入れる。