1週間ぶりのわが家に安堵 赤崎・綾里大火 一部地域で初の避難解除 「ありがたい」「ほっとした」の声
令和7年3月8日付 7面

「ありがたい」「ほっとした」。大船渡市の大規模火災発生から10日目を迎えた7日、赤崎町内の一部地域で避難指示が初めて解除された。対象者らが避難所などから帰宅し、1週間ぶりに地域に住民の姿が戻った。住民たちは消火活動に当たる関係者に感謝する一方で、今なお避難生活を余儀なくされている住民をおもんぱかり、早期の鎮圧を願っていた。
午前10時。今回の大規模火災で初となる避難指示解除の放送が防災行政無線から流れた。
対象地域は、赤崎町の宿(対象者40人)、後ノ入(364人)、森っこ(107人)、大洞(185人)、生形(4人)、山口(257人)の計6地域957人。いずれの地域も延焼拡大に伴い、2月28日に避難指示が出され、区域外に避難していた。
「6日の市の記者会見で『解除を検討する』と報告があったが、もう少し時間がかかるのかもしれないとも思っていた。ほっとした」と話すのは、宿地域に住む金野律夫さん(75)=赤崎町字跡浜。妻の勝子さん(75)と一緒に、親せきが所有する同町沢田のマンションの空き室に避難し、解除に伴い家に戻った。
大船渡地区消防組合消防本部の元消防長でもある金野さん。現場では今も同組合や全国から参集した緊急消防援助隊約2000人が昼夜を分かたず活動しており、「心から『ご苦労さま』とお伝えしたい。恵みの雨もあり、火勢が弱まったとしても、鎮圧・鎮火は切り株などをしっかりと点検する必要がある。長丁場での活動が求められるが、頑張っていただきたい」とエールを送る。
猪川町の親戚宅に避難していた森っこの金野宏司さん(62)も、久々に自宅に戻った。
生形の自宅が東日本大震災の津波で被災し、防災集団移転促進事業で整備された高台の宅地に再建したといい、「どうなるかと思ったが、家が大丈夫そうで何より。本当に感謝です」と車から家に荷物を運び入れた。「でもまだ避難指示が継続し、家に帰れない知り合いもおり、『自分だけ申し訳ない』とも思う。早く火が収まってほしい」と複雑な思いを口にした。
この日、市内の各避難所では、解除の知らせを受け、対象地域の住民らが荷物をまとめ、足早に自宅へと向かう姿が見られた。
後ノ入から大船渡中に避難した男性(69)は「避難生活中は以前から悪かった腰にさらに負担がかかり、つらかった。疲労もある。まずは家の様子を確認し、休息をとりたい」と話した。
森っこから、母と大船渡中に避難した男性(55)は「いまだ解除の見通しが立っていない地域もたくさんある。そういった地域の方々が一刻も早く自宅の様子を確認したり、心と体を休ませられれば」と願いを込めた。