待望のイサダ漁スタート 林野火災の影響乗り越え 初日は13隻で44㌧(別写真あり)

▲ 火災の影響を乗り越え市魚市場に初水揚げされるイサダ

 三陸沿岸に春の訪れを告げるイサダ漁が10日、スタートした。同日は大船渡市魚市場に13隻が入港し、計44㌧を水揚げ。市内で発生した大規模林野火災の影響で休漁が続いていた中、待望の初水揚げに浜がにわかに活気づき、漁業関係者らは今後の漁況が上向いていくことを願った。
 イサダはツノナシオキアミの別称で、主に養殖や遊漁の餌として流通。例年2月下旬から3月上旬に漁解禁となり、漁況次第では4月末ごろまで水揚げが続く。桜色の魚体は浜に春らしさをもたらし、県内では食用としての利活用も進む。
 気仙では先月25日に漁が解禁されたが、26日に発生した火災の影響で漁業者の多い三陸町綾里や赤崎町に避難指示が出され、漁船が航行する周辺海域では自衛隊などのヘリが海水をくみ上げての消火作業が行われていたことから休漁が続いていた。
 10日は、綾里地区の漁船を除く13隻が出漁し、釜石沖などで操業。午後2時30分ごろから続々と接岸し、水揚げによる久しぶりの活気に包まれた。数日前までヘリの音が響き渡っていた大船渡湾内にも、この日は漁船が波しぶきを上げて行き交う本来の光景が見られた。
 同日は、13隻で30㌔入りのかご計1480個を水揚げ。入札では、1㌔当たり175円で取引され、昨年の90円から約2倍となった。昨年の不安定な漁況や漁場形成の状況が単価に反映されたとみられる。
 県沿岸漁船漁業組合の組合長理事を務める第二十一志和丸の志田惠洋船頭(76)=赤崎町=は、火災で自身も漁船も避難。初日は釜石~吉浜の沖合で操業し、200個を超えるかごを水揚げしたが「群れが薄く、漁況は良くない」と固い表情。「火災の影響でまだ漁に出られていない船もある。早く全船で出漁できるようになれば」と願った。
 大船渡魚市場㈱の佐藤光男専務は「業界としても待ち焦がれていたイサダ漁。漁業者も何とか操業できることに安堵しているのでは」と話した。
 令和5年度における市魚市場でのイサダの水揚げ実績は、数量が913㌧で前年度比69%減、金額は8724万円で同53%減と、いずれも大幅な減少となった。気仙沿岸に漁場形成がなかったために遠くの漁場での操業を強いられ、しけで出漁できない日も多く、厳しい実績に終わった。
 綾里地区の漁船は12日(水)から操業する見通し。火災で例年よりも遅いスタートとなった中、数量、金額ともここからの挽回に期待がかかる。