火災乗り越え今季初出漁 綾里地区のイサダ漁船 漁業者ら安堵も「これから」

▲ 今季2回目となった気仙沿岸のイサダ漁。火災で被害を受けた綾里地区の漁船も出漁し水揚げを行った

 大船渡市大船渡町の市魚市場で12日、今季2回目のイサダ水揚げが行われた。この日は市内で発生した大規模林野火災で漁を見合わせていた三陸町綾里の漁船も出漁。市場岸壁で慌ただしく水揚げを行い、乗組員らは漁に出られる喜びをかみしめながら、火災の影響を払拭するほどの好漁となるよう願いを込めた。(菅野弘大)

 イサダはツノナシオキアミの別称で、主に養殖や遊漁の餌として流通。例年2月下旬から3月上旬に漁解禁となり、漁況次第では4月末ごろまで水揚げが続く。
 気仙では先月25日に漁が解禁されたが、26日に発生した火災の影響で漁業者の多い三陸町綾里や赤崎町が避難指示区域となり、立ち入りができない状況に。漁船が航行する大船渡湾内では、自衛隊などのヘリが海水をくみ上げて消火作業にあたっており、こうした状況を受け休漁が続いていた。漁業者らは、避難生活を送る中でも漁船を区域外の港に避難させるなどの対策を取りつつ、指示の解除を待ち続けた。
 今月9日に火災の鎮圧宣言が出され、10日には全地域で避難指示が解除。イサダ漁も同日に初出漁を迎え、初日は綾里地区を除く13隻が計44㌧を水揚げした。
 12日は気仙両市の陸送を含む18隻が計116㌧を水揚げ。綾里地区にあるイサダ漁船6隻のうち5隻も出漁し、午後2時すぎから続々と接岸すると、乗組員らがスピーディーにかごを陸に揚げ、イサダ漁本来の活気が戻った。
 県沿岸漁船漁業組合あみ船曳網部会の副部会長を務める第七十八明神丸の野々浦浩祐さん(52)=綾里野々前=は、釜石沖で操業し、漁獲上限のかご300個を積んで大船渡に戻ってきた。「(漁に出られて)やっとという感じ。水揚げできてうれしい」と語り「全体の漁況はわからないが、操業初日にしては良い。これからも普段通りに漁をやっていければ」と見据えた。
 水揚げの様子を見守った大船渡魚市場㈱の千葉隆美社長は「大きな火災があり、それぞれいろんな思いを抱えた中での出漁になったと思う。火災の重く、暗い空気を振り払うためにも、今後良い漁況になっていけば」と話した。
 この日は30㌔入りのかご計3881個が積み上がった。入札価格は1㌔当たり120〜103円で、初日の175円から値下がりした。