事業所被害調査が本格化 赤崎・綾里大火受け会議所、市、県が連携 〝間接影響〟の把握・支援も鍵に

▲ 避難指示が解除された綾里地区などで会員事業所の調査を実施

 大船渡市の赤崎・綾里大火を受け、10日まで避難指示が続いた地域を中心に、事業者を対象とした被害状況調査が本格化している。建物や設備の焼失といった直接的な被害だけでなく、長期にわたる避難や事業停止に伴う間接的な影響への対応の重要性も浮かび上がる。コロナ禍や物価高騰で苦境に立たされていた中での災禍となり、影響を受けた事業者を取り残さないために、実情に沿った支援策の構築が鍵となる。(佐藤 壮)

 

 事業者に対する被害状況調査は、大船渡商工会議所と市、県が連携し、12日と13日に行われた。10日に避難指示が解除された三陸町綾里の全域と、赤崎町の合足、長崎、外口の各地域に構える会議所会員事業所計約80社を第1弾の対象とし、個別訪問などの聞き取り調査を進めている。
 会議所や市、県の職員が手分けをして、各地を訪問。従業員の被災状況や、火災被害に伴う休業者数・退職者数のほか、建物や設備の損壊といった直接的な被害の有無を確認し、さらに、避難や事業停止に伴う売り上げ減少といった間接的な影響も調べている。
 物的被害では、営業所や工場、倉庫に加え、資材置き場、車両置き場などを確認。設備や機械の損傷のほか、停電による冷蔵・冷凍品を含めた商品・在庫・仕掛品の損害なども尋ね、売り上げ減少を含む損害額の見込みなども質問項目に組み入れた。
 さらに▽資金繰り悪化による仕入れ・運転資金不足▽既存の融資・リースの返済負担増大▽販路・顧客の喪失による売り上げ回復の困難さ▽客足・取り引きの減少(風評被害、キャンセル、イベント中止などを含む)──など、今後の事業経営における課題・影響も把握。事業継続に向け、必要な支援策にも話題を向ける。
 長期に及ぶ避難で事業停止を余儀なくされたことで「お客さんに別の業者を紹介したが、今後自分のところに戻ってくるだろうか」「納品できなかったことで、販路が絶たれてしまうのでは」といった懸念も聞かれるという。聞き取りした内容を取りまとめ、市や県、商議所で共有しながら支援策の構築や要望活動などにつなげる。
 会議所では今後、中赤崎や蛸ノ浦、甫嶺の各地域に構える事業者にも調査を行う方針。観光や飲食の自粛ムードもささやかれ始める中、全会員事業者を対象とした調査も見据える。
 気仙では、コロナ禍前から売り上げが回復していない事業所が多いほか、エネルギーや資材価格の高騰でも苦境に立たされている。全体的に売り上げの低調さが指摘される中、大火に見舞われた。一方、マイナス面だけでなく、震災の教訓を踏まえて早めに物品や機材を別の場所に移すなど、被害を最小限に抑える事業者の防災対応もうかがえるという。
 同商議所の齊藤光夫専務理事は「東日本大震災もそうだったが、早い段階で困っていることを共有し、相談対応や支援策につないでいくことが重要。間接的な被害を含め、被害は多方面にわたる一方、建物の近くまで火の手が及びながら焼失を免れている事業所も見られ、消防関係者による懸命の活動の成果も浮かび上がっている」と話す。
 市でも、間接的な影響に対する支援を重視。11日の記者会見で渕上清市長は「商工会議所等と連携しながらつぶさに足を運び、調査を進めている。今回の大規模林野火災を受け『被災者の定義をもう一度見直して、被災した個人、事業者の枠を広げてほしい』と、今後も強く要望したい」と述べたほか、事業意欲を失わないよう迅速な対応充実に意欲を見せる。