綾里でワカメ収穫始まる 火災で開始時期遅れも 漁業者「仕事ができ一安心」(別写真あり)
令和7年3月16日付 1面

赤崎・綾里大火で被害を受けた大船渡市三陸町綾里の各漁港で15日、養殖ワカメの収穫、加工作業が始まった。火災による避難指示などで例年より遅れてのスタートとなったが、同日は数軒の漁家がボイル作業などにあたった。収穫量や収入面への影響が懸念される中、漁業者らは仕事ができる喜びを感じながら熱心に手を動かし、浜に旬の光景が戻った。
先月26日に赤崎町合足地内で発生した火災により、綾里全域に避難指示が出された。ワカメの収穫は例年3月上旬ごろから始まるが、避難指示が解除されたのは、火災鎮圧後の今月10日。住宅地には火災の爪痕がみられ、漁業者の中には漁具が焼失してしまった人もいる。
綾里漁業協同組合(和田豊太郎組合長)は、12日に開いた会議でワカメ収穫の見通しを協議。14日から収穫を始めることとし、13日は漁業者らが養殖場の確認や火災で焼け落ちた流木などの撤去を行った。
14日は強風のため多くの漁業者が出船を控えたが、15日は早朝から刈り取りや陸上でのボイル作業に汗を流す姿が見られた。
「収入源がこれ(ワカメ)しかないから、仕事ができて安心した」「時期は少し遅れたが出来はまずまず」といった安堵の声も聞かれたほか、これから収穫を始める漁業者らが作業の準備を行う様子も確認できた。
綾里漁港(港地区)では、岩崎地域の大平秀男さん(56)が仲間とともに今季初となる作業を実施。かごに入った1㌧余りのワカメを船からクレーンで陸に揚げ、1分ほど湯通しして冷水で締めた。褐色のワカメをお湯にくぐらせると、一瞬で鮮やかな緑色に変わり、白い湯気と旬の香りが広がった。
大平さんの自宅は、幸いにも火災の被害を免れたが、避難生活の中で事態の収束は見通せず「今季はワカメもやれないと諦めていた」という。それでも「多くの知り合いが家や浜仕事の状況を気にかけ、心配してくれた」と、避難指示解除からすぐに収穫の準備を整えた。
「火災で被災した人がたくさんいることを考えると心が痛むが、全国から励ましの応援をもらい、『綾里のワカメも頑張っているんだぞ』と伝えたい」と力を込める大平さん。ワカメを収穫、加工するための道具を失い、例年通りの出荷が難しい状況の漁業者もいる中、「いつもの2倍、3倍と気持ちを込めて作業したい。『綾里のワカメは負けない』という思いで、心を寄せてくれる人たちの期待に応えられるように頑張りたい」と見据える。
綾里地区でのワカメ収穫は、週明けから本格化する見込み。