被災者らが不安直言 坂井防災相 大船渡入り 産業現場確認、避難所訪問も

▲ 林業被災現場を視察する坂井大臣(右端)

避難所では被災者と対話も

 大船渡市の赤崎・綾里大火を受け、内閣府の坂井学防災担当大臣が16日、赤崎町と三陸町綾里で現場視察を行った。林業や漁業・水産業、集落の被害状況を確認したほか、避難所にも足を運び、自宅を失った被災者は、生活面の不安などを直接自らの声で届けた。視察に合わせ、県は災害復旧事業などに関する要望書を提出した。
 赤崎町に入った坂井大臣は、合足地域の林業現場に訪れ、延焼拡大の経緯や、2900㌶に及ぶ焼失エリアを確認。強風下で主に下草を焼きながら燃え広がった惨状に加え、焼失エリアでは人工林と天然林がほぼ同じ割合であること、私有林が7割近くを占める状況などの説明を受けた。
 綾里では、石浜地域でアワビ養殖事業を展開し、火災による影響で甚大な被害を受けた元正榮北日本水産㈱を訪問。同地域に構え、焼失被害を受けた綾里漁協の定置漁業倉庫にも足を運んだ。40棟以上の建物被害が発生した港地域でも、焼け落ちた家屋の惨状などを目の当たりにした。
 全地域の避難指示解除などを受け、15日から避難所としての運営が始まった綾姫ホールも訪れた。約20人が身を寄せるスペースを視察し、火災で住宅を失った被災者と対面した。
 被災者は家族の命が助かったことが救いとしつつも、「子どものストレスが心配。自分の家が再建できるかも不安」と心情を口にした。避難所から入浴支援施設まで距離があることや、仮設住宅暮らしとなる時に、14年前の東日本大震災時にあった家電製品支援の見通しが明らかになっていない不安も話題になった。
 別の被災者は「国から支援金は出るが、今までの生活を取り戻すことはできないし、次世代の私たちの被害は、本当に計り知れないもの。いろいろな立場の方々に支援を」と訴えた。坂井大臣は「一人一人が再建の希望を持てるように、何ができるのか知恵を出したい」と述べた。
 ホール内では、渕上清市長が立ち会う中、八重樫幸治副知事が坂井大臣に県の要望書を提出。災害復旧事業等の適用や避難者支援、災害廃棄物の早期処理、農林水産基盤の早期復旧など9項目で、八重樫副知事は「視察された漁業施設は、水産施設ということで『激甚』の対象にはなっておらず、配慮をお願いしたい。二重被災を受けた再建にも特段の配慮を」と求めた。
 視察終了後、坂井大臣は記者団に対して「震災からの復興途上での林野火災による被害の甚大さを実感した。被災自治体と緊密に連携をとり、住まいの確保をはじめ被災された方々の生活再建に取り組む」と語った。
 仮設住宅への家電整備など、住宅再建の前段階に当たる被災者支援策に関しては「いろいろな形があると思う。例えば能登の場合は、災害NPOによる支援の中で準備をした事例があると聞いている。模索をしたい」と述べた。