再建後押し さらに充実を 大規模林野火災 生活支援金の申請開始 住まい確保への不安は尽きず
令和7年3月21日付 1面

大船渡市大規模林野火災の被災世帯を対象とした被災者生活再建支援金の申請受け付けが20日、市役所と三陸町綾里の綾姫ホールで始まった。被災者にとっては金銭的な支援を受ける第1弾の手続きとなるが、加算支援金も含めた最高額は14年前の東日本大震災時と基本的に変わらず、建築費用高騰などが続く中で住宅再建に向けた不安は尽きない。支援金申請は綾姫ホールでは21日まで受け付け、市役所では平日に随時対応する。
(佐藤 壮)

市役所で行われた被災者生活再建支援金の申請受け付け
市役所での支援金申請は市地域福祉課で受け付けるが、20日は別室に専用スペースを設けた。来庁した被災者が罹災証明書を提示することで、必要書類の大半が記載された状態で発行するなど、スムーズに手続きを進める対応がとられた。
住宅の被害程度に応じて支給する「基礎支援金」と、住宅再建方法に
綾里の小路地域で自宅や長屋などを失った崎山信光さん(57)は、「支援金はもらえるだけありがたいが、住宅再建には不安がある。同じ場所に建てたいと思っているが、震災の時よりも建築費用が上がっている。ウニ漁に出る道具も失ったので、これからが心配」と心情を明かした。そのうえで「国や県、市には、漁業者や住宅を再建する側の立場に即した支援をお願いしたい」と語った。
応じた「加算支援金」があり、基礎支援金の先行申請も可能。受理から1カ月程度で支給される見込みとなっている。市によると、市役所と綾姫ホールで合わせて午後4時までに27人が申請に訪れた。いずれも基礎支援金の手続きだったという。
市役所では平日午前9時~午後5時に対応する。綾姫ホールには同日と21日も同時間帯に、特別受付窓口を設けることにしている。
佐々木義和保健福祉部長は「生活再建支援金は、被災者にとっては今後に向けた第一歩の手続きとなる。これから控える義援金配分の手続きも含め、一つ一つの事務を着実に進めるが、スピード感を持ってあたりたい」と力を込める。
赤崎町外口地域で被災し、市役所で申請を終えた袖野雄さん(45)は「こうした手続きは、休みでないとできない。きょうは近くの寺で、火災で位牌を焼いてしまったことの相談もあった。自宅再建を考えているが、今は避難生活から次の住まいにどう移るかが大事。避難所ではどうしても高齢者は体調を崩しがちで、疲労もたまってくる」と話した。
大規模林野火災による住家被害は、9日までに102棟を確認した。焼失をはじめとした全壊は76棟、大規模半壊を含む「全壊以外」は26棟。全壊被害は、綾里の小路、石浜、港、赤崎町の外口で10棟超に上る。
被災者生活再建支援金は、災害で居住する住宅が全壊するなど生活基盤の被害を受けた世帯に対し、生活再建を支援するために支給するもの。震災時も同じ制度で被災世帯に支給が進められた。
全壊世帯の建設・購入による再建は加算支援金を加えると300万円。基本的に、支援額は震災時と変わっておらず、当時も増額を求める声が多かった。市内の建築業者からは「震災時の再建と比べて、坪単価は20万円前後上昇している。加えて、4月から新築は省エネ基準適合が義務化され、補助メニューはあるが、建主の初期費用はどうしても増える」といった声が聞かれる。
震災時も義援金から全壊世帯などに支給が行われたほか、住宅再建には一定の要件下で〝上乗せ〟の制度もあった。今回も義援金配分委員会での協議などを経て支給される見込みだが、資材価格上昇など14年前の震災とは異なる状況への対応策は現段階では見えてこない。多くの被災者は、住み慣れた場所での再建を望む中、既存制度にとらわれない支
援充実の必要性が浮かび上がる。
被災者生活再建支援金の支援額は別掲。