美術品の展示施設 「杉の家はこね」に決定 検討委で協議 8年秋に開設
令和7年3月22日付 7面

陸前高田市所蔵の美術品を展示・保全する施設開設に向けた検討委員会(熊谷睦男委員長、委員7人)は21日、市役所で本年度2回目の会合を開き、展示施設を小友町の「杉の家はこね」に決定した。当初は既存の市有施設を活用し、展示と収蔵機能を併せ持つ施設を設ける考えだったが、美術品が多いため、展示と収蔵の施設を分けることとし、この日はメインとなる展示部門を担う施設を決めた。一般公開は令和8年10月を目指す。(高橋 信)

開設場所などを話し合った第2回会合
会合には全委員が参加。佐々木拓市長は「当市の貴重な財産であり、さまざまな場所に散らばっている絵画、書などを大事に保管し、見てもらう場を設けることは、復興の先のまちづくり、活性化のうえでも重要なこと。皆さんから意見を聞いたうえで進めていきたい」とあいさつした。
候補施設は▽旧矢作中校舎▽旧気仙小校舎▽旧高田東中校舎(陸前高田グローバルキャンパス)▽杉の家はこね──の4カ所。委員は昨年11月と同日の2回に分け、全ての候補施設を視察した。
同日の会合では、各施設の長所・短所を整理しながら協議。最終的には▽海を見渡せるロケーション▽木造の外観が美術館にふさわしい▽天井が高く、展示物が映える──などの理由から推す意見が相次いだ、杉の家はこねに決めた。
一方で、同施設はスペースが限られ、冬季閉館する可能性があることなどから、収蔵場所を別に設ける方向となった。収蔵施設は候補施設の残り3カ所から選ぶ計画で、杉の家はこねを補完する「第2の展示場」としても運用できないか、検討を重ねることとした。
次回の会合は夏ごろを予定し、施設整備案について協議する。
その後、施設設計、改修工事に入り、8年度は管理体制を決定し、10月に一般公開する。
市は平成初期に、市内出身者や市ゆかりの作者の美術品を収集などする「カルチャービレッジ構想」を掲げ、美術館整備の計画も打ち出したものの頓挫。東日本大震災後、市民文化会館や市立博物館など被災した社会教育施設が復旧したが、芸術作品を常設展示する施設はないまま現在に至っている。
こうした中、郷土にゆかりのある画家らの貴重な作品を適切に管理しようと、展示保全施設整備への機運が高まり、本年度、気仙地区を代表する芸術家や森の美術館(千葉県流山市)館長らでつくる検討委員会を立ち上げた。
市教委によると、展示対象と見込んでいる美術品は現在把握している限りで、少なくとも200点程度ある。
このうち、震災の津波をかぶり、全国の博物館関係者らによる文化財レスキューを経てよみがえった絵画などは約160点。ほかに震災後、市に寄贈された美術品が30〜40点程度あり、展示施設に飾られる品々は芸術性に加え、震災に関するさまざまなストーリーを有することとなる。