被災支援策を迅速実施へ 市が「林野火災対策局」を新設 復旧・復興見据え庁内体制整備

▲ 組織体制強化に向け林野火災対策局を新設

 大船渡市は、大規模林野火災の発生に伴い、20日付で新たに林野火災対策局を設置し、21日に本格始動した。被災者支援策や復旧・復興事業策を取りまとめ、迅速な実施につなげる方針策定や総合調整を担う。火災で住宅を失った世帯の直接的な支援だけでなく、農林水産業分野の被害復旧も急務。被災者ニーズの確認や現行制度にとらわれない支援をはじめ、部署横断的な対応や国、県への要望調整の重要性なども浮かび上がる中、組織体制の強化を図る。(佐藤 壮)

 

 21日は市役所市長室で辞令書交付式が行われ、渕上清市長、局長を務める松川伸一総務部長、専任で業務にあたる大和田智次長らが出席。辞令書を手渡した渕上市長は「大きな役割は、今後の支援策を取りまとめ、指導・調整を行い、被災者への支援を迅速に届けること。災害後の復旧活動や、地域の再建に向けた取り組みを進めていくうえで、関係部署と連携し、庁内体制をしっかり構築することも求められる」と述べた。
 これに対し、大和田次長は「かつてない大規模な林野火災であり、これまでにない対策が求められる。一体となった支援策を進められるよう先導役を担い、早く被災者が安心して生活できるよう努める」と語った。
 引き続き、これまで第3応接室だった本庁舎2階の一室に看板をかけ、対策局としての業務がスタート。局長1人、次長1人、主幹14人、係長1人、主事1人の体制で、局長と主幹は他部課との兼務となり、残る3人は専任職員として各種業務にあたる。
 同日は、職員間で「キックオフミーティング」が行われ、今後の業務体制などの認識共有を図った。松川局長は「各課で担当している業務の進捗を確認しながら、市としてどう進めるかを取りまとめ、一本化していくことが求められる。関係各課からしっかりと情報収集し、復旧・復興や被災者の生活再建を推し進めたい」と話した。
 対策局設置に関する関連条例は、19日の市議会定例会本会議で可決された。復旧・復興の方針づくりに加え、各種事業の総合調整などを担う。
 大規模林野火災は先月26日に発生。直後は、鎮圧に向けた消火活動や避難所開設・運営が主業務となってきたが、今月10日に全域で避難指示が解除され、三陸町綾里や赤崎町での被害の実態が少しずつ明らかになる中、復旧・復興に向けた業務展開に移行しつつある。
 被災者支援では今後も、厳しい避難生活を送る被災者のケアが重要となるほか、災害等廃棄物処理事業として損壊家屋などの解体・撤去や、被災者生活再建支援制度の申請受理・運用、住宅の応急修理事業や離職者の再就職支援も求められる。
 さらに、特別相談窓口など中小企業等への支援や被災した農林水産業の復旧支援、森林災害復旧事業に目を向けなければいけない。仮設住宅から住宅再建までは長期間に及ぶと見込まれる中、被災者に寄り添った心のケアも欠かせない。
 復旧・復興事業では、他自治体からの応援も含めた人員確保も急務。焼失面積は2900㌶と平成以降では国内最大の規模となり、森林だけでなく水産業分野の資材などにも延焼被害が拡大した中、国や県など関係機関への要望調整も重要性が増している。
 発災から1カ月が近づく中、現行制度だけでは補い切れない部分も浮き彫りになってきた。時代変化や地域の実情、産業特性に合わせた支援策など、柔軟な対応も求められ、林野火災対策局が組織横断的な施策推進をけん引できるかが鍵となる。