町議会臨時会で廃止条例可決 農林業振興資金貸付基金 木工団地訴訟の和解成立で
令和7年3月25日付 1面

住田町議会は24日、臨時会を開き、農林業振興資金貸付基金の廃止などを可決した。同基金から多額の融資を受けながらも破産した三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)を巡り、町が連帯保証人とその相続人に対して融資の未返済分や遅延損害金などの支払いを求めた裁判の和解が成立したことに伴うもので、返済される元金を合わせた基金3億円余は、和解金の振り込みが確認されたあと廃止し、一般財源に繰り入れとなる。(清水辰彦)
この日、可決されたのは、同基金条例の廃止と令和6年度一般会計補正予算。このうち、同基金は農林業の振興に必要な資金を関係団体に貸し付けるために平成18年4月に設置。これまで8件の貸し付け実績があり、このうち三木とランバーには18年~20年にかけてそれぞれ計3回、合わせて7億6827万円を貸し付けた。
両組合は令和2年7月末に事業継続を断念して破産を申請し、同8月に破産手続きが開始。このため町では同10月、両組合の連帯保証人とその相続人計19人に対し、融資の未返済分や遅延損害金など合わせて約10億5000万円の支払いを求めて提訴した。
町の債権は、基金からの貸付金残金や施設貸付料、町有林原木未収金、利息などを合わせると約12億4000万円に上るが、3年度に破産手続きが終結した結果、町への配当は3700万円程度で、大部分が回収できないことが明らかになっていた。
提訴から4年以上にわたり裁判が続いてきたが、町によると31回の審議が行われた結果、今年2月25日に盛岡地裁から和解案が提示された。提訴以降、被告19人のうち3人に判決が出たほか相続放棄があり、残る12人は請求棄却などを求めて町と争ってきた。和解案は、12人が合わせて1億8948万円を町に支払うもので、遅滞なく和解金が支払われた場合、被告側のその他の支払いが免除となる。
今月19日、原告、被告双方が合意して和解が成立した。町では今後、住民に対して説明の場を設けるとしている。
支払額1億8948万円は遅延損害金、利息の順に充当し、残った7766万5000円が元金への返済額となる。これに基金残高の2億3172万8000円を合わせた3億939万3000円が一般財源に繰り入れられる。
基金条例廃止について、町当局は「平成20年1月を最後に貸し付けの実績がなく、融資制度や補助事業の充実などにより、農林業関係団体の資金確保の状況が基金設置当時と比べて変化していることを踏まえた」などと説明した。
議員からは「債権総額12億4000万円の全体像が分かるような説明を町民にしてもらいたい」「(融資した当時の)前町長も交えての説明会をお願いしたい」といった声が上がった。
これに対して、神田謙一町長は「不明な点もあるが、それを含めて第三者の判断をいただくために裁判という形を取らせていただいた。議会で議決いただき進めてきたものでもあるので、議長とも協議しながら町民説明のあり方を考えていきたい」と説明した。
このほか可決された一般会計補正予算は、歳入歳出に4億2797万円を追加し、総額を56億9088万円とするもの。歳入は主に、同基金からの繰り入れに伴う増額で、基金からの繰り入れなど4億954万円を財政調整基金積立金とする。