「仮設住宅入居を最優先」 大船渡市大規模林野火災 きょう1カ月 立て直しの展望は 渕上市長に聞く  枠組み超えた産業支援も

▲ 現状や今後の展望を語る渕上市長

 大船渡市赤崎町合足地内で2月26日に出火し、同町と三陸町綾里の広範囲に延焼した大規模林野火災は、発生から1カ月となった。焼失面積が約2900㌶と平成以降では国内最大の規模に及び、綾里地区で1人が亡くなり、210棟の建物被害が確認された。多くの人々が被災や避難生活で苦難の時を過ごし、住宅再建や広範囲に及ぶ産業被害、林野再生と、課題は山積している。暮らしやなりわいを、どう立て直すか。市災害対策本部のトップでもある渕上清市長に展望を聞いた。(聞き手・佐藤 壮)

 

 ──火災発生から1カ月となる。現段階で重要視している対策は。
 渕上 市は、今後の取り組み方向として▽鎮火に向けた消火・警戒活動▽避難所運営等▽被災者支援▽被災者等支援メニューの検討など組織横断的な対応──と整理した。
 現段階では、被災された方々の住まいの確保や再建への支援を急ぐこと、農林水産業を中心とする被害状況や、避難指示発令で事業活動に影響を受けた事業者等の実態を早急に取りまとめ、その支援策等を整理して実行に移していくことが重要と考える。


 ──200人近い市民が避難生活を送り、「いつ再建できるのか」と不安の声が多く聞かれる。住宅再建支援に向け、どのように施策を展開するか。
 渕上 避難者が一日も早く、建設型、民間賃貸型、公営住宅の各応急仮設住宅に入居していただくことを最優先に考えている。そのためにも、県と連携しながら入居に向けた各種作業を進めている。応急仮設住宅への入居後は、改めて住宅再建に係る意向調査を実施し、被災世帯の個別の再建に向けた細かいフォローを実施する。


 ──基幹産業の漁業も被害が甚大である半面、激甚災害指定の対象に入る見込みがないなど、現行制度では支援が届きにくい面がある。どのように復旧を後押ししていく考えか。
 渕上 農林水産業を中心に、まずは被害の実態把握を急いでいる状況。そのうえで、現行制度でどこまで対応可能か見極めるが、対応が困難なものもあると思う。新たな支援制度の創設が必要なものは、速やかに国や県に要望したい。
 国や県における支援が困難なものも考えられる。そういった場合は、近年発生した全国各地の災害対応状況なども参考にして、独自支援のあり方や支援策の要否を検討していきたい。


 ──火災前から人口減少が進行し、今回の火災でコミュニティー維持への不安も聞かれる。今後の対策をどう進めるか。
 渕上 仮設住宅を急いでいるのも、そこにある。地域コミュニティーが維持されるか否かは、非常に懸念している。地元の地区運営組織などと連携して維持に努めたい。
 避難生活をはじめ、日常生活の影響長期化に対応するためにも、被災された方々と地域住民が常に交流できる場の創設・提供も重要になってくる。また、東日本大震災の経験を踏まえながら、避難所への支援員配置といった具体策も検討したい。
 心のケアに関しては、発災直後から学校から保護者に児童・生徒の様子や体調の確認を行っている。再開後も、様子の把握に努めてきた。
 未就学児をはじめ幼い子どもは、不安や心理的なストレスが強く、身体症状や行動の変化として表現される傾向が高いとされ、きめ細やかに対応していく。現状においては変化に対応している子どもがいる半面、防災無線の放送や消防車のサイレンに敏感に反応する子どもがいることも聞いている。


 ──国、県に要望していきたいことは何か。
 渕上 3月12日には、石破首相をはじめ関係大臣らに対して、市議会議長とともに被災者の生活再建施策に対する財政措置など4項目の要望書を提出した。鎮圧宣言や避難指示解除以降、消火活動から被災者の早期の住まい確保などに施策の重要性が変わってきている。
 現在、被災者等支援メニューや、産業再生メニューなどを検討している状況。既存の支援制度だけでは対応が難しい実態が、現在でも見えてきている。綾里漁協の保管倉庫に保管されていた定置網復旧への支援など、対策を講じなければならない。
 また、森林再生に向けた取り組みも、相当な時間がかかるだろう。取り組み期間の柔軟な対応や、財源の確保、技術的支援を要望していきたい。これまでの枠を超えた補助制度や、財政的な支援の要望を中心に行いたいと考える。


 ──復旧・復興に向けた市民へのメッセージを。また、国内外の人々には、今後どのような支援を期待しているか。
 渕上 被災された方々の暮らしの再建、事業者等のなりわいの再生、さらには焼失した森林の再整備に全力で取り組む。合わせて、被災者の暮らしや事業者の希望となり得るように、対策やスケジュールを示しながら実行していきたいと考えている。
 国内外の皆さまには、物心両面にわたり数々のご支援をいただいていることに感謝を申し上げる。市としても国や県、関係団体と連携しながら被災者の生活再建や事業者のなりわい再生に全力を挙げて取り組んでいる。引き続き、ご理解、ご協力をお願いしたい。