大震災14年・伝えるを問い直す/「考える力」養い備えに 震災経験ない子らに分かりやすく おはなしころりん 学校利用増える防災WS
令和7年3月29日付 7面

大船渡市のNPO法人おはなしころりん(江刺由紀子理事長)は、児童・生徒向けに東日本大震災や災害への備えを学んでもらう「防災ワークショップ」を行っており、震災を経験していない子らが分かりやすく学べるとして年々利用する学校が増えている。児童・生徒が震災や復興の過程を知り、ゲームなどを通じて防災の知識、災害への備えとなる「考える力」を養っており、同法人は「ワークショップを通じて災害時に落ち着いて考え、自分の命を自ら守れるようになれば」と、今後も継続していく考えだ。(三浦佳恵)
おはなしころりんは、平成15年に任意団体として誕生し、28年にNPO法人化、令和5年に認定NPO法人としての認定を取得した。学校などでの読み聞かせといった読書推進活動の傍ら、震災後は読書活動を通じたコミュニティー形成の支援、盛町のおはなしサロンの運営、大船渡町にあるおおふなぽーとの管理補助や防災・市民交流事業も担っている。
震災後、県教育委員会が県内の小・中・高校で取り組む「いわての復興教育」(いきる・かかわる・そなえる)に準じる形で独自の防災学習プログラムを検討していた中、同元年6月に江刺理事長が兵庫県神戸市を訪問。同市の阪神・淡路大震災記念「人と防災未来センター」で卓上の子ども向け防災ゲームと出合い、「子どもたちが楽しく防災を学べるきっかけになる」と考えた。
センター側の許可を得て大船渡に戻ると、東日本大震災の経験や地域の実情を踏まえた〝大船渡版〟のゲームを制作。サイズを大型化し、神経衰弱ゲームで災害時に必要な物品を知る「防災絵合わせ」、防災の知識を学びながらゴールを目指す「防災すごろく」を完成させた。
同年8月には、遠野市内の中学校がおおふなぽーとで防災ワークショップを受講。震災後における同法人の活動などを学び、防災ゲーム等を体験した。大船渡市内の学校にも声をかけ、大船渡、大船渡北各小学校の児童らが震災当時や復興の様子、防災の意味などに理解を深め、防災ゲーム、新聞紙スリッパ作り等を体験した。
2年には避難所運営をテーマにした「防災パズル」も完成し、ポリ袋クッキングや避難時用の安眠マット体験などもメニューに組み入れた。日頃の読み聞かせ活動などで学校、児童・生徒と顔の見える関係性を築いてきた強みを生かし、説明や体験内容は学校側の要望、利用する学年に合わせて柔軟に対応してきた。
受講した子どもたちからは「津波や地震が起きたときに何を持てばいいか分かった」「(震災当時)体育館で1~2週間暮らしていたことがびっくりした」「津波などは見に行かず、すぐ逃げることが大切と知った」などの感想が寄せられており、震災や防災を〝自分ごと〟としてとらえている様子がうかがえる。
学校の授業とは異なる視点から震災、防災を学べる場として、ワークショップは徐々に市内の学校に浸透。同法人によると、6年度は市内の小・中学校、支援学校の計10校から通算15回の利用があった。
6年度は3年生が利用した末崎小学校の大場江利子校長は、「学校とは違う視点で震災や防災を学べるし、読み聞かせ活動などでいつも子どもたちをみている方々だからこそ、低学年でも防災学習に参加できると思う。防災学習は繰り返し行うことが必要なので、今後も利用を続けたい」と話していた。
江刺理事長は「災害時に何をすればいいのか、子どもたちが自分の頭で考えるよう意識した内容にしている。考える力を用意していれば、いざというときに落ち着いて物を考え、自分の命を自分で守れる。それを最終目的にし、今後も続けていく」と見据えている。