「先の見えない状況に不安」 大規模林野火災 蛸ノ浦地区の団体が合同要望 多岐にわたるる生活・農林漁業の影響浮き彫り

▲ 蛸ノ浦地区の各団体が要望を取りまとめ市に提出

 大船渡市赤崎町の蛸ノ浦地区づくり協議会と長崎、合足、清水の各契約会、蛸ノ浦契約会生産森林組合などは、大規模林野火災の被災者生活再建や焼失林野などの再生支援に関する要望をまとめ、市に提出した。各団体は「先の見えない状況に不安を感じる」とし、住宅再建では情報発信充実や市独自の支援策、山林内の被害への対策などを強調。地域の実情を取りまとめた要望からは、大規模林野火災の多岐にわたる影響や、細やかな被害確認、対応の重要性も浮かび上がる。(佐藤 壮)

 

塩害、田植え準備、灰流出にも言及

 

 要望書の提出は27日に市役所で行われ、同協議会の志田俊一会長、長崎契約会の大畑養一会長と磯谷巳智也副会長、合足契約会の上野孝典会長、合足地域公民館の千代和人館長に加え、赤崎地区在住の熊谷昭浩、森亨両市議が訪問。市側では渕上清市長や松川伸一林野火災対策局長、関係部長らが対応した。
 志田会長は冒頭、発災以降の迅速な避難所運営などに感謝を示した。そのうえで、外口や合足地域における全壊家屋19戸を含む47戸の家屋被害や、山林で長年手がけてきたスギ、マツなどへの被害を指摘。「地域住民は焼失した住宅の再建や山林の再生に動き出しているが、先の見えない状況に不安を感じている」と述べた。
 要望項目のうち、住宅再建に向けたきめ細やかな情報発信に加え、住宅補修など市独自の支援策は全団体共通のものとして強調。海水を用いた消火に伴う家屋・林野・畑地などへの影響も調査し、適切な対応を求めた。
 大雨による山林内の土砂崩れや、灰を多く含んだ河川水が海に流入する状況、倒木被害の発生も懸念。森林再生や損壊した家屋など、全体の取り組みや復旧工程表を速やかに公表する重要性も訴えている。
 さらに▽テレビや有線放送をはじめ共同受信設備等の再建支援(長崎契約会)▽焼失した山林の固定資産税、法人市民税の複数年減免(生産森林組合)▽倉庫などに保管した漁具の焼失に対する購入支援策(合足、長崎契約会)▽水田への用水供給設備と作業小屋の焼失状況調査の実施と支援策(合足契約会)──と、団体個別の要望も盛り込んだ。
 懇談では、各出席者が具体的な状況、課題を示しながら詳細調査や対策を求めた。長崎、外口地域では、住宅地でも上空から海水を散水する消火活動が行われたことを受け「火災で被災しない家屋でも、エアコン室外機などの塩害が出てくると思う」と指摘した。
 水田の用水供給設備に関しては「田植えの季節を間もなく迎える。4月半ばまでに対応したい。時間がかかるとなれば地域でやる。その後の援助でもかまわない。とにかく早く水を引っ張りたい」と、切実な声が聞かれた。漁業面では「風が強い日は、流木がワカメの施設に引っかかっている。強風のたびに流れるのでは」との不安が寄せられた。
 生産組合では、共同で所有する山林約60㌶が被害を受けたという。「林道に大きな石が落ちている状態。止めるものがなくなった。焼け焦げた丸太も落ちている。春から夏にかけての大雨では、灰を含んだ水が流れ、川から海に来ることも懸念している」と声を上げ、森林再生に向けた道筋提示も強調した。
 このほか、一部家庭が沢水を引くパイプの焼失や浄化槽設備の被災など、生活に直結する分野の影響も挙げ、細やかな調査を要望。「ペットを飼う人たちも安心できる避難の周知を」と、今後を見据えた提言もあった。
 要望だけでなく「地域でやらなければならないことは対応したい」と、復旧・復興に向けた協働の姿勢も強調。その上で、早期に行政側の対応姿勢を明確に示すよう求めた。
 これに対し、渕上市長は「こまごましたこともお聞きし、しっかりとサポートしたい。要望書を取りまとめていただいたのはありがたい。現場ならではの要望ととらえた。住まいの再建、なりわいの再生は待ったなし。なりわいとなるものは、優先的に、確実に進めたい」と述べた。