「地元業者活用」の行方は 大規模林野火災 商議所が市と議会に要望
令和7年3月30日付 1面

復旧事業の建設業発注巡り
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経済循環効果や円滑性強調
大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)は、市大規模林野火災に伴う工事発注に関する要望書をまとめ、大船渡市と同市議会に提出した。地域経済の活性化や円滑な復旧工事進行の観点に加えて、持続可能な地域づくりも見据え、地元事業者への優先的な発注を求める内容。建設業界は担い手確保や資材価格高騰、働き方改革への対応など課題が山積し、コロナ禍後も厳しい状況が各種調査で浮き彫りになっている中、今後の市や県の対応が注目される。(佐藤 壮)
要望活動は28日に行われ、米谷会頭、水野公正、細川廣行両副会頭、紀室裕哉建設工業部会長らが市役所を訪問。渕上清市長と伊藤力也市議会議長にそれぞれ要望書を手渡した。
同日開かれた商議所常議員会で要望に関する動議が出されたことから調整を進め、その後の総会で報告。終了後、すぐに会頭らが市役所に出向く〝スピード要望〟となった。
市、議会とも同じ内容の要望とした。大規模林野火災に伴う災害復旧には長期化が見込まれる中、地元経済界として積極的な協力、貢献の意志を強調。消火活動においては、地元事業者の従業員も消防団として積極的に活動した実績にも触れている。
市内の地理や自然環境に精通している強みにも言及。「地域内での経済循環を促すことで、復旧後の持続的な発展にも寄与する」とする。建設業界における人手不足の深刻化も指摘し、復旧関連工事の地元発注が雇用確保に大きな効果をもたらす点も挙げた。
14年前の東日本大震災でも地元業者が連携して復旧作業を進めた実績に加え、他地域の大規模災害でも地元事業者が優先的に発注を受け、迅速・適切な復旧につながった事例も掲げる。復旧事業のスピードの面からも、優位性を強調した。
大規模林野火災を受け、市内では、被災世帯の避難生活解消に向け、旧綾里中グラウンドと旧蛸ノ浦小グラウンドで県による建設型応急仮設住宅の整備が本格化。被害が多方面に及び、一定規模の復旧・復興事業が見込まれる中、工事発注の行方にも関心が高まり始めている。
要望の背景には、コロナ禍以降も続く景況の厳しさがある。市と商議所が本年度実施した同商議所会員事業所対象のアンケート調査では、前年同月の売り上げ状況からの比較を聞く質問で「30%以上減」「50%以上減」と回答した建設業の割合は3割を超える。
全業種を見ても、今後懸念される影響で「売り上げ・受注の停滞、不振」を挙げる割合は7割近くに上る。コロナ禍以降も続く原材料費やエネルギー価格高騰などに伴う苦境は他業者でも見られ、今後同様の要望・訴えが予想される。
米谷会頭も28日の定例記者会見で「地元に経済効果が生まれるように、働きかけていく必要がある」と述べた。
政府は、大船渡市内で相次いで発生した大規模林野火災について、「局地激甚災害」に指定する政令を閣議決定し、同日に施行。被害木の伐採、搬出、伐採跡地の造林などの森林災害復旧事業にかかる経費について、国が2分の1を補助することとなった。
一方、現段階では既存制度の枠ではカバーできない被害も見えている中、きめ細かい復旧・復興に向けては、市や県独自の支援策が欠かせない。工事発注だけでなく、被災者が生活再建する際の購入・サービス利用で地元事業者を選んだ場合に、支援を充実させるといった仕組みを構築できるかも鍵となる。