秋サケ漁獲 過去最低を更新 6年度の県内実績まとまる 大船渡は約半減で不漁顕著に
令和7年4月4日付 7面

県内における令和6年度の秋サケ漁獲数(沿岸・河川)は、前年度から2・8%の微減で、過去最低を更新した。大船渡市魚市場への水揚げ数は約半減と、深刻な漁獲減に直面している。各河川での採卵も計画を大幅に下回ったほか、同年度は県外からの移入卵も少なく、稚魚の生産・放流にも影響が及ぶ。県内では秋サケの不振で事業経営が維持できず、解散に至った組織もあり、各漁協では危機的状況下での経営維持に向けた知恵を絞る。(菅野弘大)
県農林水産部水産振興課がまとめた6年度最終版の秋サケ漁獲速報によると、県全体の沿岸・河川累計捕獲数は4万3078匹。前年度の4万4300匹とほぼ同水準だったが、16万匹台だった令和4年度と比較して約4分の1と大幅な減少となっている。
県沿岸における累計漁獲数は2万1859匹(重量59・66㌧)で、前年度の2万8273匹(同85・56㌧)の77%にとどまる。魚市場別の漁獲数は、田老、宮古、船越、大槌が前年度を上回り、そのほかはいずれも下回った。
中でも大船渡は低迷が著しく、市魚市場への累計水揚げ数は712匹(前年度比48・8%減)と、県内で最も低い割合に。重量は1・77㌧(同46・9%減)、1㌔当たりの平均単価は1243円(同1・3%減)だった。
一方、県全体の河川捕獲数は1万9663匹(同52・97㌧)で、前年度の1万4933匹(同44・86㌧)に対して132%と上回った。関係者によると、沿岸漁獲の定置網に入らなかった魚が河川に流れている可能性があるという。
気仙における河川捕獲数の累計は、吉浜川が85匹(メス25匹、オス60匹)、綾里川が165匹(メス92匹、オス73匹)、盛川が515匹(メス203匹、オス312匹)、気仙川が4973匹(メス2011匹、オス2962匹)となっており、盛川を除いて前年度を上回った。
採卵数は県全体で1987万2000粒(前年度比28%増)となったが、山形県からの移入分を含めても2174万7000粒と、計画のわずか25%にとどまる。気仙の実績は、吉浜川が1万7000粒(前年度比56%減)、盛川が33万1000粒(同22%減)。気仙川は489万8000粒(同32%増)で、県内河川ではトップだったものの、気仙全体では524万6000粒で、各漁協での採卵計画数合計1740万粒の3割と低迷する。
採卵後、受精させた卵は、気仙の拠点ふ化場となっている陸前高田市の広田湾漁協の施設に移して管理、育成。育った稚魚は盛川漁協の施設に戻し、3月中に放流した。稚魚を体長6~7㌢と従来よりも大きく育てて放流するなどの工夫を重ねているが、生存率は海水温などの自然環境に左右されるため、今後の回帰量増加につながるかは見通しが難しい状況となっている。
長きにわたって沿岸の定置網漁業の主力魚種とされてきたが、近年の漁獲量は主力と呼べないほど減少しており、運営する各漁協の収益にも大きな影響を及ぼしている。盛川漁協では、漁協組織の継続に向けた収入増加を狙いに、サーモンの陸上養殖などにも取り組んでいるが、依然としてサケ事業の赤字が経営に重くのしかかる。
3月31日には、サケの不漁による経営悪化で久慈市の久慈川漁協が解散。県内水面漁業協同組合連合会長も務める盛川漁協の佐藤由也組合長は「サケの状況悪化で、何年も前から『漁協がつぶれてしまう』と言い続けてきた。具体策がなくては、どこも厳しい。6年度は前年度並みの捕獲、採卵ができたが、本年度は太平洋の水温がどうなるか、われわれには読めない。自然環境次第だ」と語る。