東日本大震災14年/開館日「5月23日」で調整 津波で全壊の県文化財「旧吉田家住宅主屋」 陸前高田 最後の復旧施設
令和7年4月4日付 3面

東日本大震災で全壊し、市が復旧を進めてきた陸前高田市気仙町今泉地区の県指定有形文化財「旧吉田家住宅主屋」の開館日について、5月23日(金)で調整していることが関係者への取材で分かった。震災後、市が手掛けてきたハード復旧事業は同施設で完了となる。災禍を乗り越え、現代によみがえる主屋開館は、壊滅的な津波被害から14年をかけて進めてきた復興まちづくりの大きな節目となる。(高橋 信)
同日は現地で記念式典を開催する計画。市教委は今月中に開館日を正式発表する見通しだ。
吉田家は江戸時代に仙台藩の旧気仙郡(陸前高田市、住田町、大船渡市、釜石市唐丹)24カ村を統治する地方役人の最上位職「大肝入」を代々世襲し、郡政の中心的な役割を果たしてきた。
主屋は座敷3室、御台所などがある茅葺の建物で、享和2(1802)年に建築。敷地内には土蔵、味噌蔵をはじめとする附属屋や庭園などがあった。幕府の巡見使や藩主の視察の際に宿所として使用された記録が残っている。
主屋は周辺のまち並みと合わせ今泉の歴史・文化を現代に伝える財産として保存され、地元では「大庄屋」と呼ばれて親しまれた。仙台藩の地方支配を物語る貴重な遺構として、平成18年、主屋、土蔵、味噌蔵、納屋(長屋)の1件4棟が県指定有形文化財(建造物)に指定された。
震災で主屋は全壊し、部材は各地に散在したが、吉田家当主や地域住民らが回収に奔走。全体の6割程度の部材が集まり、世界的に類のない津波被害を受けた木造文化財の復旧が始まった。
部材の残存率などを踏まえ、30年12月、主屋1棟のみを県の文化財として指定継続することが決まり、名称は「旧吉田家住宅主屋」に変更。市建設業協会による現地での復旧は、令和3年度から本格化した。
建設費は外構工事を含め、約7億6000万円(管理棟を除く)。周辺で火災が起きた際に建物を守るための放水銃2基も設置された。市は日本遺産「みちのくGOLD浪漫」の構成文化財に、主屋を追加するよう文化庁に申請している。
入館料は個人300円、団体200円。市民や市外の学生、高校生以下、身体障害者手帳、療育手帳の交付を受けている人、その介護者は入館無料。ただし来年3月末まではすべての人の入館を無料とする。
管理棟には常時2人の職員を配置する。同棟には大肝入としての執務記録などが記載されている県指定有形文化財「吉田家文書」の内容を閲覧できる端末を置き、主屋関連の資料も展示する。