〝復興エール〟実績後押し 通常版ふるさと納税 前年度比58%増 火災発生受け3月は3倍超の伸びに
令和7年4月4日付 1面

大船渡市の令和6年度における通常版のふるさと納税寄付金実績が、5年度比58%増の7億8407万円となった。市大規模林野火災を受け、3月に1億円を超える申し込みがあり、全体実績を押し上げた。火災以降受け付けている「ふるさと納税災害支援寄付」にとどまらず、全国から支援が寄せられている。関係者は、大船渡の産品を返礼品として選択する〝リピーター〟の取り込みや、火災からの復旧・復興を発信しながらのアピールに力を入れる。 (佐藤 壮)
市のふるさと納税は、令和5年度から高知県須崎市に本社を構える㈱パンクチュアル(守時健代表取締役)が担っている。盛町の大船渡営業所は一昨年4月に開設。市のふるさと納税寄付額は、4年度までは年間2億円前後で推移していたが、同社への業務委託1年目となる5年度は約4億9700万円となった。
同営業所などによると、6年度は毎月3000万円以上の寄付が続き、4~9月の上半期累計は2億3600万円。5年度同期の約1億6110万円と比較し、約1・5倍の実績となった。
一般的にふるさと納税は、寄付の上限が確定する年末に〝駆け込み〟の申し込みが増える。昨年12月は2億3000万円に達した。
大規模森林火災の発生を受け、今年3月も寄付の申し込みが増加。昨年3月は2910件、約3800万円だったが、今年は9712件、1億2300万円となった。
一般的に、3月も確定申告で納税額が固まることなどから、寄付も多い傾向にあるが、前年比で3倍超の伸びとなった。急増した状況でも、在庫が足りない理由でのキャンセルや大幅な納品遅れはなかったという。
これにより、年度実績も7億8400万円と、前年度比で約2億8000万円(58%)増に。国内全体のふるさと納税は10%程度増えているが、この割合を大きく上回る。件数も5年度の約3万2000件から、6年度は約5万5000件となった。
通常は、ふるさと納税のポータルサイトから申し込み、「米」「肉」など返礼品から選ぶケースが多い。大規模林野火災以降は、検索ワードに「大船渡」「大船渡 ふるさと納税」といった入力が急増した。
現在、約110事業所が計1000種類程度の返礼品に対応。早採りワカメや5月以降のウニ予約といった水産品だけでなく、時期を問わず人気の菓子類をはじめ、特定の事業者に偏ることなく伸びているという。
返礼品を希望しない寄付の申し込みも、昨年3月は2件だったのが、今年は3000件に達した。備考欄には、復旧・復興へのエールを送るメッセージも多く寄せられている。
火災発生翌日の2月27日に、三陸町綾里と赤崎町の計10事業者の情報掲載を停止。避難解除以降に再開したが、2事業者は被災・廃業のため受け付けを取りやめている。3月下旬以降、通常版の寄付は全体として落ち着いた動きを見せているという。
パンクチュアル大船渡営業所の佐藤陽子所長は「7年度はリピーターの確保が大きなテーマとなる。事業者さんが『ありがとうございます』といったお礼状を添えるだけでも大きく印象が異なるので、細やかな部分を支えたい。大規模火災から復興した姿も伝えていくことが大事」と、今後を見据える。市は10億円到達を目標としている。
一方、災害支援寄付ふるさと納税は、企業版を含め各ポータルサイトで受け付けている。通常版のふるさと納税とは異なり、返礼品はなく、ほぼ全額が災害支援向けとなる。3月末時点で2億7766万円が寄せられた。
通常版ふるさと納税の推移は別掲。