来館者1万人超え終了 大好評博したオシラサマ展 常設展示も増やす

▲ 1万人以上が詰めかけた特別展は終了したが、オシラサマの常設展示は以前よりにぎやかに

 陸前高田市立博物館(菅野義則館長)が企画した特別展「陸前高田のオシラサマはいま」は、同市の人口の半分以上にあたる1万人の来館者を迎え、3月30日に終了した。北は北海道から南は沖縄まで、全国の人々が「オシラサマにひと目会いたい」と訪れ、同館は本設オープン以来最大のにぎわいを見せた。また、今後は特別展をきっかけに寄贈されたオシラサマも常設展示で紹介することに。もとの2世帯分3体から、6世帯分15体へと大幅に増え、「会期中には惜しくも見に行けなかった」という人たちの来館を待つ。
 いつごろ、何のために始まったのか不明の点も多い謎の民間信仰・オシラサマを取り上げた同展。市内37世帯111体分のご神体を展示し、呼び方や形体、性格、まつり方など、少しずつ異なる信仰形態や、オシラサマを所有する家々に伝わるエピソード、東日本大震災の津波で失われたご神体などについても紹介し、地域に根ざした文化の重要性を次代へ伝えるために開催された。
 今年1月の同展開始直後には、オシラサマが過去に語ったとされる〝言葉〟について紹介した同館主任学芸員・熊谷賢さんのSNS投稿が爆発的話題を呼び、一気に来館者が増加。神様でありながらどこか人間くさく、敬われつつも家族同然に親しまれてきた存在に対し、「こんな民間信仰が今も残っていたとは」と再注目され、全国各地からオシラサマに「ぜひ〝会って〟みたい」と人々が詰めかけた。「お供えしてほしい」と、さまざまな地方のお菓子も寄せられた。
 3月28日には来館者が1万人を突破。日本中の注目を集めたことで、中には「行きたいけれど、遠いので会期中には行けそうにない」「会期を延ばしてもらえないか」という声もあった。
 同館はこの反響に応えることも検討したが、「震災前に開催した特別展の時は、あとから『早く家に帰りたいと思っていた』とオガミサマを通じて語ったオシラサマもいた。もともと3月30日までの約束で博物館に来ていただいているのに、展示期間を延長するのはオシラサマとの約束を破ることになる」と、あくまで〝オシラサマ・ファースト〟を貫いた。
 一方、今回をきっかけに博物館へ寄贈された4世帯分12体のオシラサマは常設展示されることに。展示場所も、順路上の目に入りやすい場所に変更。熊谷さんは「博物館がおうちになったオシラサマたちに、いつでも会いに来てください」と呼びかける。
 また、もともと常設展示にあり、大震災で被災した1体は、由来などの情報カードが津波で流失してしまったため「かつて住田町にあった」ということしか分からなくなってしまっている。同館はこうしたオシラサマについても「少しずつ情報をたぐり、いつか『〇〇家のオッシャサマ』として〝心〟を取り戻してあげたい」とし、特別展が終わっても博物館としての役割を果たしていく構えだ。