さらなる誘客へ意欲 アドベンチャーツーリズム求めて 外国人観光客が増加傾向 気仙
令和7年4月10日付 7面

県商工労働観光部観光・プロモーション室は、令和6年の外国人観光客の入込動向をまとめ、公表した。全国的にインバウンド(訪日外国人旅行)が増加する中、県内にも多くの外国人観光客が訪れており、気仙では大船渡市や住田町が大きな伸びを示した。主に自然や文化を体験する「アドベンチャーツーリズム」を求めての来訪が多く、観光関係団体では、さらなる誘客へと意欲を見せる。(清水辰彦)
外国人観光客は、全国的に増加傾向にある。政府観光局によると、6年の年間訪日外客数は3687万人で、前年比47・1%増。過去最高だった令和元年の3188万人を500万人上回り、年間過去最高を更新した。
県公表の「いわての観光統計」によると、6年の外国人観光客は県全体で45万6543人(前年比12万9525人増)。気仙は、大船渡市が2725人(同1284人増)、住田町が250人(同161人増)、陸前高田市が253人(同62人減)で、気仙全体では3228人(同1383人増)。
台湾、アメリカ、オーストラリアからの来訪が多く、県によると、アメリカやオーストラリアからは、大船渡市はみちのく潮風トレイル、住田町は滝観洞を目的としたケースが目立ち、入り込みは増加傾向にあるという。
台湾からの来訪増加は、大船渡市と住田町が締結している定住自立圏形成協定に基づき、両市町の観光関連民間事業者や市、観光物産協会の各関係者が台湾に出向いてPRを行った成果が現れているとみられる。
前年の2倍近い外国人が訪れた大船渡市。トレイルに関しては、同市の一般社団法人・大船渡地域戦略(志田繕隆理事長)による取り組みも外国人観光客増加の大きな要因となっている。同法人では、地域が連携しての受け入れ体制整備、観光コンテンツ開発を展開。志田理事長は「アメリカ、オーストラリアなどからの来訪はトレイル関係が多く、伸びてきている」と話す。志田理事長が支配人を務める大船渡温泉への海外からの宿泊者は、そのほとんどがハイカーだという。
大規模林野火災によって、人気だった綾里ルートが被害を受けたことから、その影響が懸念される。この中、同法人では本年度、環境省の「国立公園における感動体験アドベンチャートラベル創出事業」に採択され、ルート復興を見据えた「ハイカーと地域の力で再びつなぐ1000キロの道プロジェクト」も展開する。
志田理事長は「市観光物産協会のアプローチによって台湾からの来訪も増えており、みちのく潮風トレイルの効果でアメリカ、オーストラリア、欧州も増加している。火災の影響はあるが、トレイルを歩く人は増えていくと思うので、受け入れ体制を整備し、『また来たい』と思ってもらえるようにしたい」と意気込む。

新施設オープンの効果もあり、住田町の滝観洞でも外国人観光客が増加
住田町は、前年比で3倍に迫る外国人観光客が足を運んだ。アドベンチャーツーリズムによる上有住・滝観洞への訪問が大きな要素となっており、昨年4月に滝観洞観光センターがリニューアルオープンしたことで、さらに弾みが付いた。
滝観洞ではホームページも多言語表記するなどインバウンド対応にも力を入れており、同センターを運営する住田観光開発㈱の千葉孝文専務は「実際に見て、触れることで楽しんでもらえる部分もある。言葉の壁を少しでも解消し、外国人の方にも楽しんでもらえる観光地にしたい」と意欲を見せる。
陸前高田市では、外国人観光客が微減となったが、教育旅行客は9837人で、前年比3828人増とコロナ禍前の水準に戻っている。