春の行楽 トビに注意を 陸前高田市内で被害相次ぐ

▲ アバッセたかた駐車場の上空を旋回するトビ(10日午前11時16分)

 陸前高田市内で、トビによる被害の情報が増えている。東海新報の調べでは、けがを負った人は確認されていないが、「手に持っていた飲食物をとられた」「店で買ったものを駐車場でとられた」といったケースが相次いでいる。サクラの開花も始まって春の行楽シーズンが本格化し、外を出歩く人が多くなる中、商業関係者らが注意を呼びかけている。(阿部仁志)


 トビは、タカ目タカ科。優れた視力で空から獲物を狙い、普段は死んだ動物や魚、昆虫などを見つけて食べる。
 市内では、中心市街地や道の駅高田松原などの観光エリアを中心に、昨年から「屋外でトビに食べ物をとられた」という被害が相次いで確認されている。
 高田町の甘酒専門店「AMAZAKE STAND(アマザケ・スタンド)」では昨春、客が手に持っている商品をトビに奪われるというケースが複数あったという。
 アバッセたかたの駐車場では、スーパーで購入した食品をトビにとられたという話や、従業員が休憩時間に弁当を持って外に出ると、近くを旋回するトビに狙われるという話が聞かれた。店では現在、チラシを掲示して買い物客に注意を促している。
 ほかにも、複数の商業関係者や地域住民からは、コンビニエンスストアや菓子店、道の駅などで商品を購入した人が、手にしていた食べ物をとられていたという情報が寄せられた。
 今月5日、中心市街地での路上市「ほんまる茜市」開催中には、複数のトビが獲物を狙うようにして会場上空を旋回。そこから降下して人混みに入る場面を目撃したアバッセたかたの職員は、「人を恐れていない様子だった。大きな鳥なので近づいたら怖いし、けが人が出たらと思うと不安」と話していた。
 トビは、本来おくびょうな性格で、人には警戒して近づかないとされる。野鳥に詳しい市立博物館の浅川崇典学芸員(35)は、「人に慣れているということは、そうなった理由がきっとある」とする。
 考えられる理由の一つとして、「餌付け」が挙げられる。普段は警戒心の強い鳥であっても、人から簡単に餌をもらえることを学習すると、その場に居ついてしまうことがあるという。
 浅川学芸員は「野鳥が餌を与えられることに慣れてしまうと、自然の中で生きられなくなってしまったり、病気が広がる原因になったりする」と語る。「仮に、餌付け、または意図していなくても餌付けに該当するような行為をしている人がいれば、人と鳥の双方にとって良くないことなので、やめてほしい」と呼びかける。
 暖かくなり、外出する人が増えていくこれからのシーズン。トビに襲われないために、また、人がトビに餌を与えることがないと学ばせるためにも、「トビが見えたら食べ物を隠す」「屋根のある場所やパラソルの下など、トビから見えない場所で物を食べる」など、個々の対策が求められそうだ。