「三面椿」優秀古木・銘木に 国際ツバキ協会が認定 歴史や文化面、保全など評価
令和7年4月12日付 3面

大船渡市末崎町中森に鎮座する熊野神社(志田隆人宮司)境内にあり、ヤブツバキでは国内最大・最古を誇る「大船渡の三面椿」が、国際ツバキ協会(ICS)による「優秀古木・銘木」の認定を受けた。神社を含めた歴史的・文化的な価値に加え、保全の取り組みなども高く評価されたとみられる。全国椿サミットの開催を来年に控え、市内関係者は三面椿を生かしたさらなる地域振興などに期待を込める。(佐藤 壮)
ICSは国際的な非営利団体で、世界各国に約2000人の会員がいるとされる。ツバキに関するさまざまな活動を通じて、知識普及や栽培の推進などを目指している。
認定事業は、ツバキの古木・銘木の世界的な保全活動促進が目的。三面椿に関しては、熊野神社の志田宮司が申請者となった。
昭和44年6月に「大船渡の三面椿」との名称で県指定天然記念物に指定され、樹齢は770年余(約1400年との説もある)と推測される。令和3年には、日本ツバキ協会の優秀古木ツバキに認定された。
熊野神社の創建は、鎌倉幕府・北条時頼の時代(1246~1256年)に当たる。本殿の東・西・南の三面に椿が植えられていたとの言い伝えから「三面椿」と呼ばれてきた。
社殿の拡張などに伴い、西、南側の2本は失われ、東側の1本のみが残った。平成14年には台風被害で主幹2本が折れ、樹形のほぼ半分が失われたが、大船渡東高校の生徒らの尽力で、折損木から採取した枝の挿し木に成功。育成した苗木は後継木として、同21年に熊野神社の西面・南面に植栽された。
現在の樹高は約10㍍で、枝張りは東西12㍍、南北13㍍。6支幹に分岐しており、株元の幹回りは8㍍。花期は3月上旬~5月初旬で、今が見ごろを迎えている。14年前の東日本大震災では浸水被害を免れ、幾多の津波を乗り越えてきた地域の誇りや、復興の象徴でもあり続ける。
令和2年度には、県や市の補助金を生かし、根に対する悪影響を防ぐ目的で幹の周囲にあった石垣を撤去。官民の連携で保全活動が進められている。
第36回全国椿サミット大船渡大会(全国椿サミット協議会主催)は、来年3月14日(土)と15日(日)に開かれる。市内では平成12年以来26年ぶりで、東日本大震災とコロナ禍による2度の中止を経ての開催。大会を通じて、三面椿に対する関心のさらなる高まりも期待されている。
志田宮司は「認定を通じて、さらに多くの方々に三面椿のことを知ってもらえれば。保存活動も含めて認められたのはうれしい。花は来週ぐらいまでは見ごろが続き、近くに植えられているサクラとの〝共演〟も楽しめると思う」と話す。