大規模林野火災の教訓は 消防庁、林野庁が消防防災対策の検討会設置 大船渡の要因踏まえ今夏取りまとめへ
令和7年4月12日付 1面

総務省消防庁と農林水産省林野庁による「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方検討会」は11日、東京都内で開かれた。焼失面積が現段階で2900㌶と平成以降の林野火災では国内最大に及ぶ状況を踏まえ、原因調査の結果などから消防活動などの検証を進め、今後取り組むべき火災予防や消防活動、消防体制充実強化のあり方を探る。今年夏ごろの取りまとめを目指す。(佐藤 壮)
検討会は、日本防火技術者協会理事長の関澤愛氏が座長を務める。委員は、大船渡市消防団の大田昌広団長や県女性消防連絡協議会の佐藤菊子副会長、県森林組合連合会の澤口良喜代表理事専務のほか、学識経験者ら21人で構成。気象庁や防衛省がオブザーバーに入る。
初会合には、オンラインや代理も含め、各委員らが出席。冒頭、消防庁の池田達雄長官は「取り組むべき火災予防、消防活動、装備技術の検討を行い、全国の消防対策充実につなげなければならない。気候変動も踏まえ、今後も起こりうると想定し、対策強化が不可欠」と述べた。
林野庁の青山豊久長官は「焼損した森林を火災前の豊かな森林に回復させるため、全力を尽くす。これほど大面積に及ぶ私有林の山火事を復旧した経験は過去にあまりない。長期間を要する取り組みとなるが岩手県や大船渡市と連携して進める」とあいさつ。
関澤座長は「大規模林野火災は、山火事にとどまらず、家屋にも被害が及び、林野居住地近接火災というべきもの。近年、国内で林野火災は減少傾向にあったが、なぜ今年に入り、発生・拡大が続いているのか」と、検証の必要性を語った。
その後の会議は、非公開で行われた。事務局から延焼状況や消火活動の経緯、山林被害などの現状に関する説明が行われ、各委員が意見を述べた。オンライン上で、大船渡地区消防組合や大田消防団長らも活動を振り返り、広域にわたる応援体制への感謝や、市内で林野火災が相次いだことによる苦労などを語ったという。
終了後、関澤座長に加え、消防庁や林野庁の各担当者が記者団に会議内容を説明。この日は大規模林野火災の概要や被災地における森林の概況に加え、特徴や課題も議題となった。
消防庁がまとめた資料によると、特徴と課題として▽気象、地形など複数の要因が重なり合った条件下▽短時間で広範囲に拡大▽多様な技術を活用した消火活動が求められた──を挙げる。
委員の発言を通じて、拡大要因に関する意見交換が行われた。この中では、市内で2月中に複数回の林野火災が発生した中、大規模な延焼に至った要因解明の必要性を指摘する発言も出た。
地表火(枯れ草や落ち葉など)の延焼速度には風、傾斜、林床可燃物の状態が大きく影響し、「地表火が大きくなると樹冠火(樹木の葉、枝など。飛び火も発生するとされる)に移行し、被害が拡大するのではないか」との見解も。配布資料では、火元とされる赤崎町合足の東側に位置する三陸町綾里の八ケ森で樹冠火に伴う大規模な延焼があり、綾里の打越・小路間から八ケ森へと北東に伸びる沢沿いで強い燃焼の発生がうかがえるという。
また、現地での森林水分量の測定から、樹木の表面だけでなく深層部も乾燥した状態だったとみられる。避難指示を判断するうえで、樹冠火の延焼速度を考慮する必要性なども話題に上がった。
消火活動では、水利確保や局地的な気象変化把握の各重要性に加え、海外で見られる衛星画像を活用した消火活動の検討を提案する発言も。24時間体制で対応する消防関係者の疲労管理の大切さも浮かび上がった。火災予防では、火災警報時における火の使用制限に加え、市街地と林野の境界部における対策の充実に関する意見も寄せられた。
次回の検討会は今月下旬で調整し、今後は、樹冠火拡大や広範囲の建物に被害が及んだ影響分析も議題として想定される。5、6回程度の開催を見据え、夏ごろの取りまとめを目指す。