国宝級の経巻を公開 中尊寺・紺紙金字一切経の可能性大 関心高く町内外から600人来場(別写真あり)
令和7年4月15日付 7面

住田町教委は13日、町制施行70周年記念事業の一環として、中尊寺の国宝「紺紙金字一切経」の一部とみられる経巻を役場町民ホールで展示した。町内の個人宅で発見されたもので、気仙と平泉のつながりを示す貴重な経巻を一目見ようと、町内外から多くの人が会場に足を運んだ。町では今後、所有者の意向も踏まえながら、保管場所などを検討していく。(清水辰彦)
平安時代後期に東北地方で勢力を持った藤原清衡・基衡・秀衡の3代によって、天治3(1126)年創建の中尊寺に奉納された仏教経典の書写は、総称「中尊寺経」として知られる。
このうち、秀衡は紺色に染めた紙に金泥で経典を書写した「紺紙金字一切経」約5300巻を奉納した。この経巻は現在、中尊寺には2800巻ほどしか残っておらず、そのすべては一括で国宝指定されている。
町内で発見されたのは、秀衡が12世紀後半に奉納した紺紙金字一切経を構成する経巻の一部「大乗大集地蔵十輪経(だいじょうだいしゅうじぞうじゅうりんきょう)」全10巻のうちの1巻とみられる。中尊寺が8巻を所蔵しているが、残り2巻の所在は分かっていなかった。
今年1月、世田米の個人宅に保管されていた経巻が町文化財調査員を通じて平泉町の平泉世界遺産ガイダンスセンターに持ち込まれ、調査の結果、「秀衡が奉納したうちの1巻である可能性が非常に高い」との結論が出された。経典の内容に関連するする仏画などが描かれている「見返絵」のほか、経文の1枚も欠けているが、保管状態は非常に良好だという。
展示会には町内外から合わせて約600人が来場。経巻の調査を行った、県文化振興事業団埋蔵文化財センターの羽柴直人上席専門調査員による解説も行われた。
解説の中では「全体的な特徴から、平安時代の書写経と考えられるし、体裁、寸法などは秀衡経と考えて矛盾がない」「使用されている漢字、体裁から、秀衡経と同様『宋版一切経』(中国の宋の時代に印刷された一切経)を手本にしていることが分かる」「中尊寺ゆかりのお経の存在は、平泉と気仙の地域的なつながりから十分に考えられる」などとし、「こうした点から、本経は秀衡奉納の『紺紙金字一切経』のうちの1巻と考えられる」と語られた。
展示会場には絶えず行列ができ、来場者は「こんな素晴らしいものがよく残っていたと思う。まさに宝」「すごくきれいな状態だった。気仙と平泉の関係も興味深い」などと、〝国宝級〟の経巻を眺めながら感嘆の声を漏らした。
大船渡市大船渡町から家族で訪れた熊谷宏子さん(48)は「ただただ圧倒された。850年前のものに見えないぐらいキレイ。国宝級のものが気仙にあったことに驚いたし、ロマンがありますね」と話していた。