文化庁認定の100年フードに アワビの肝生かした「としるの貝がら焼き」 大船渡東高生も継承、発信に意欲
令和7年4月17日付 7面

気仙沿岸で古くから伝わるアワビの肝部分を生かした料理「としるの貝がら焼き」が、文化庁の「100年フード」に認定された。令和6年度から「蝦夷あわびを活用した地域活性化事業」を展開する大船渡商工会議所が申請したもので、「あわびのまち大船渡」推進につなげる考え。県立大船渡東高校(今野晋校長)食物文化科の生徒も継承に取り組んでおり、5月3日(土)の大船渡碁石海岸観光まつりでは試食提供を計画している。(佐藤 壮)
文化庁では、多様な食文化の継承・振興への機運醸成を見据え、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を「100年フード」と名付け、継承する取り組みを推進している。認定後は、各種メディアで認定団体の活動が紹介されたり、ロゴマーク入りの商品が販売されるなど、注目度の向上が期待される。
毎年度公募を受け付けており、としるの貝がら焼きは「伝統の100年フード部門~江戸時代から続く郷土の料理」の中で認定された。アワビの貝殻を小さな鍋として使い、穴部分にみそを詰め、ダイコンの細切りとともに肝を煮込む。
高級食材として知られる乾鮑では、肝部分はほとんど使われず、すぐに鮮度が落ちる。気仙では「浜のまかない料理」として親しまれてきた。
大船渡商議所は令和6年度、復興庁の「新ハンズオン支援事業」を活用し、市内で漁獲、加工される蝦夷アワビに着目した地域活性化事業を展開。大船渡東高校食物文化科で「食のchallengeコース」に所属する3年生の生徒たちは、郷土料理「としるの貝がら焼き」の調理を通じて、肝部分を生かす技術などを習得した。
本年度も、新たな顔ぶれとなった同コース8人の生徒たちが、継承に取り組む。16日には同校で調理実習が行われ、県飲食業生活衛生同業組合の千葉武継支部長の指導を受けながら調理を進めた。
実習では、市内事業者が冷凍加工したアワビの肝を使用。みそを塗ったアワビの貝殻に、千切りにしたダイコンと、砂袋などを取り除いてぶつ切りにした肝を置き、味付け後にオーブンで火を入れた。ひと煮立ちしたタイミングで肝から外した白い部分やバターも添え、再び焼き上げた。
実習を終えた鈴木莉央さんは「アワビの扱いは、難しかった。もっとこの料理が広まってほしいし、地元内外の人たちに味わってほしい」と話し、笑顔を見せた。
千葉支部長は「まつりイベントで提供するには大変なところもあると思う。もっと研究して、イベント当日は楽しみながら提供してほしい」と生徒たちに語りかけ、期待を込めた。
生徒たちによる試食提供は、末崎町の碁石海岸レストハウス前で開催される大船渡碁石海岸観光まつりのうち、初日の3日に行われる予定。今年も、県内外から多くの観光客が予想される中、生徒たちは郷土料理を生かした「あわびのまち」ならではの発信に意欲を見せる。