木造仮設住宅「上棟」に 大規模林野火災 熊本、能登の経験も生かし
令和7年4月17日付 1面

大船渡市大規模林野火災の被災者向けに県が整備している建設型仮設住宅は16日までに、すべての棟で屋根部分の柱や梁を取り付ける「上棟」となった。旧綾里中と旧蛸ノ浦小の両グラウンドで進められ、いずれも木造平屋で計40戸を計画。東日本大震災や熊本地震、能登半島地震の各被災地での仮設住宅建設を担った職人を含め連日100人超が従事し、避難生活の解消や穏やかに暮らせる環境づくりへつち音が響く。来月上旬の完成が見込まれる。(佐藤 壮)
9棟計30戸の整備が進む旧綾里中グラウンドでは16日、2棟で屋根となる部材の設置が進められた。3棟10戸の旧蛸ノ浦小グラウンドを含め、すべての棟で上棟を迎えた。今後は、内外装や上下水道の配管などが進められる。
コンクリートの基礎に、県産スギ材の柱を用いた建築が進む。断熱材をはじめ、現場関係者は「普通の住宅と変わらない機能」と語る。両側に勾配がある切妻屋根には、大船渡の住宅文化にならい、瓦が並ぶ。
当初計画の間取りは、2Kと3Kの2種類。木造で整備することで、多人数の家族は2戸に分かれて居住する場合、間仕切りを取り除くといった対応が可能という。長屋タイプではあるが、綾里では9棟、蛸ノ浦では3棟に分けることで、世帯同士のまとまりや通路確保、整備の効率性などを両立させた。
整備は3月19日にスタート。短期間で県産材などを調達し、連日2カ所で地元内外の職員ら計百数十人が従事する。建築には、16日で本震から9年を迎えた熊本地震や、昨年の能登半島地震・豪雨に伴い建設された仮設住宅整備のノウハウも生かされている。
福島県福島市の大工職人・渡辺利弘さん(46)は、14年前の東日本大震災以降、各地の仮設住宅整備に携わってきた。「半数近くの職人は、どこかの仮設住宅建設であったことがある顔見知り。能登の現場は、地盤が不安定な所もあったが、ここは学校のグラウンドだった場所で安定している。段取りもしっかりしているし、棟数が少ない分、車両も近くに入れるのでスムーズにできていると思う」と話す。
主幹工事会社となっている伊藤建設㈱=盛岡市=の伊藤馨代表取締役は「上棟は一つの区切り。棟によっては、内部の仕上げも進み、安全に十分注意しながら皆さんに働いてもらっている。避難している人々が、安心してゆっくり過ごせるようにしたい」と語る。
市は、仮設住宅の入居申し込みを30日(水)まで受け付ける。来月の入居開始を見据える。