2月から発行 市有林J─クレジット 150㌧分販売の好スタート 県外3社が購入 森林整備に収益充て好循環へ

▲ 市有林J─クレジットのチラシを手にする担当者

 陸前高田市が今年2月に発売した「市有林J─クレジット」の販売が好調だ。森林の二酸化炭素(CO2)吸収量を国が認証して売買できる仕組みで、令和6年度は2カ月間で県外の3社に計150㌧分を売り、好スタートを切った。販売益225万円は市内の森林整備に充当する。市はクレジット創出との両輪で、市有林を森づくりのフィールドとして企業などに提供する制度も新設。地域活性化、脱炭素化を見据え、豊かな森林資源の活用に力を入れていく。(高橋 信)

 

 J―クレジットは、適切な森林管理などによるCO2吸収量を「クレジット」として国が認め、企業や自治体が売買できる制度。購入者側は、企業活動で排出されたCO2量に相当するクレジットを購入することで、オフセット(埋め合わせ)できるメリットがある。
 市は2月、気仙町の市有林564・4㌶を対象エリアに販売を開始。市内で最も立木の成長が旺盛な地域で、間伐が盛んに行われるなど長年にわたる森林整備活動の実績が、CO2吸収能力に優れているとして発行の認定を受けた。
 第1回のクレジット発行量は約3000㌧。価格は1㌧当たり1万5000円(税込み)に設定した。
 発売後、外食大手ワタミ㈱(本社・東京都大田区)を皮切りに、㈱ウェイストボックス(本社・愛知県名古屋市)、㈱ガイアドリーム(本社・東京都豊島区)の3社が購入に手を上げた。取引量は各社50㌧ずつで、販売収益は植栽や下刈り、除間伐などの森林整備促進に役立てる。
 好調な販売の背景に、市が5年、公益財団法人Save Earth Foundation(セーブ・アース・ファンデーション、渡邉美樹代表理事)、ワタミエナジー㈱(山﨑輝代表取締役)と締結した森林資源活用に関する連携協定がある。
 資源循環と森林再生・保全に取り組むセーブ・アース・ファンデーションには、特別賛助会員・団体会員71社、サポーター1451人(5年度実績)が加盟。同法人のネットワークを生かした森林保全の普及啓発が奏功し、クレジットの買い手がついたという。
 購入者の3社は、市が森林クレジットの創出と同時に運用を始めた「企業等による森づくり制度(企業の森制度)」にも参加。同制度は高田町内の市有林を社員による森づくり、レクリエーション活動の場として企業などに提供する仕組みで、市は同制度の活動を通じ、企業とのつながり強化を図る。
 環境省から市が選定を受けた脱炭素先行地域の事業計画にも盛り込まれている森林クレジット。森林経営の新たな財源としても販売促進に期待が集まる。
 販売在庫は現在2846㌧。累計100㌧以上の購入者には地元材を使った木製の記念盾を贈る。今後、県内企業に対するPRも検討していく。
 市農林課林政係の蒲生夏生係長は「セーブ・アース・ファンデーションやワタミエナジーとのそれぞれの強みを生かした取り組みの成果が販売につながり、貴重な財源を確保できた。一度買っていただいた企業から『また陸前高田から買いたい』と思ってもらえるよう、企業の森制度などを生かしてつながりを持ち続けたい。さらに県内企業にも紹介できるよう、複数の販売チャンネル構築を目指す」と見据える。