三陸花火 開催見送りへ 資金不足理由に実行委が判断 5月4日に予定、目玉行事が急転
令和7年4月24日付 1面

陸前高田市の高田松原運動公園で5月4日(日)に予定されていた三陸花火大会の開催が、見送られることが分かった。主催する実行委員会の浅間勝洋委員長(44)が23日、東海新報社の取材に応じ、明かした。資金不足が理由で、同日、観覧チケット購入者や関係者らに通知したとみられる。本番まで2週間を切った中での急転直下の展開で、官民を巻き込んだゴールデンウイーク(GW)の大規模なイベントゆえに各方面に影響が広がりそうだ。(高橋 信)
実行委は23日午後6時30分ごろから、公式ウェブサイトやSNSなどで開催の見送り決定を順次公表。同時にチケットを事前購入した約1700組にメールなどで通知し、これに前後して市をはじめ、関係機関にも連絡したとみられる。
浅間委員長は同日、東海新報社の取材に対して「今回から新たに資金、運営両面で連携・協力していただく予定だった企業との連携が困難となり、不足した資金をカバーすることができなかった」と述べた。今後、チケット購入者への返金手続きを進めるという。
実行委は市内の個人・団体など有志で構成。「花火を通じて三陸から元気と笑顔を届けよう」と、令和2年秋にプレ大会を開き、以降、春に三陸花火大会、秋に競技部門が加わる三陸花火競技大会を開催している。
花火と音楽を組み合わせたミュージックスターマインなどを連発するワイドな花火ショーが目玉で、三陸沿岸で最大規模を誇る大会として認知度が高まっている。昨年秋は1万5000発を超える花火を打ち上げ、来場者数は過去最多の約1万5000人(実行委調べ)に上った。
今回は通算10回目の節目を迎え、実行委は「これまでの感謝と次回大会のさらなる発展を発信しよう」と、集大成的なイベントを目指して準備を進めてきた。
チラシには「三陸花火、10回目の頂点へ。」とのキャッチコピーを記載。当初、特別ゲスト招致を交渉するなど、スペシャル感ある企画を練っていたが、資金難に伴い、GWが近づき、期待感が高まっていた中で、イベント自体の中止に追い込まれた。
三陸花火は過去にも運営上の課題が表面化したことがある。4年秋の競技大会で、実行委が設けた有料駐車場の受け入れや誘導対策が万全でなかったため、交通渋滞に巻き込まれた大勢の観覧客が会場に入れないまま花火の打ち上げが始まるというトラブルが発生。返金に応じる事態となった。
5月4日は高田町の中心市街地で、地元商業者らによる花火大会に合わせたイベントが控えているが、予定通り開催されるかは不透明だ。ホテルなどでは宿泊予約のキャンセルが相次ぐ可能性があり、市内観光への打撃は必至。飲食、交通、小売りなどさまざまな業種でも中止の余波が及びそうだ。
浅間委員長は「まちなかでも花火に合わせて新たにイベントを企画すると聞いており、さまざまな関係者の準備を踏まえると申し訳ない気持ちしかない。開催見送りに伴う対応に専念したうえ、10回目として準備してきた企画を必ず次の大会に生かす」と陳謝した。