延焼拡大要因の考察示す 東京で大船渡市大規模林野火災踏まえた検討会 激しい燃焼→飛び火→住家被害の流れも
令和7年4月25日付 1面

消防庁と林野庁による「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方検討会」が23日、東京都内で開かれ、消防庁などによる火災原因の調査結果(速報)や延焼拡大要因の考察が示された。局所的な強風の中、火元付近での激しい燃焼から飛び火が綾里湾対岸にも及び、多くの家屋が被災した綾里の港地域では飛び火が起因となったことが明らかになった一方、初期消火活動で延焼を食い止めた状況も浮かび上がった。検討会では今後取り組むべき消防活動や火災予防などを探り、今夏の取りまとめを目指す。(佐藤 壮)

多くの住家が被災した綾里の港地域(3月10日)
検討会は、日本防火技術者協会理事長の関澤愛氏が座長を務め、委員は大船渡市消防団の大田昌広団長や県女性消防連絡協議会の佐藤菊子副会長、県森林組合連合会の澤口良喜代表理事専務のほか、学識経験者ら21人で構成。気象庁や防衛省がオブザーバーに入る。
今月11日以来の開催で、オンラインや代理も含め、各委員らが出席。冒頭、関澤委員長は「さまざまな調査や気象条件、消防、自衛隊の活動に関する報告をいただく。各専門の立場から意見を」などと述べた。
その後の会議は、非公開で行われた。終了後の説明によると、原因調査の中間的な報告、各消防機関の活動についての説明後に議論が交わされた。
調査は、3月17~19日に消防庁消防研究センターや同庁職員が大船渡地区消防本部と林野庁、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所が協力して実施。今月2~4日にも、同センターの職員が消防本部とともに行った。
この中で、火元付近や大規模な樹冠火が発生した綾里・八ケ森の状況に加え、延焼拡大過程の「節目」と考えられる場所などを調べた。消防本部の通信記録に加え、建物火災に関しては消防活動に関する情報も収集した。
大規模林野火災は、2月26日午後1時2分、赤崎町の合足漁港付近にいた人からの通報で覚知。この直後に「風は海から(北側の)田んぼへ」と通報があったほか、現場付近では北東方向にトタン部材が電話線に引っかかったという。南~南西の局地的な強風がうかがえる。
消防隊到着時には、県道を越えた斜面がすでに燃えていた。漁港側の県道脇には、樹冠に達するほど強く燃えたスギが数本あり、県道を越えて東側に延焼した一因とみる。合足から北東側の八ケ森では、午後3時ごろまでに地表から樹冠まで全て燃えた領域がある一方、その他の地域は地表火(枯れ草や落ち葉など)による拡大が多かったとみられる。
八ケ森から綾里湾を挟んだ田浜地域では、同2時前後に、複数の飛び火を消防隊員が確認。この直前には、八ケ森で火山噴火にも似た煙が見られ、田浜側に拡大した。さらに、火の粉等が東側にも広がり、同3時時点では延焼面積が600㌶に達したとみられる。
綾里・港地域では、午後3時30分から5時にかけ、飛び火からの出火が多く見られ、大船渡消防署が消防団や県内応援隊と連携して消火活動にあたった。隣棟に燃え移って延焼が拡大した場所があった一方、消火活動や広い道路幅、空き地、地理的な高低差、比較的新しい住宅の不燃外壁といった要因から「焼け止まり」に至った。
また、同3時30分ごろ、同地域北側の消防団屯所付近で出火があったが、地元消防関係者が初期消火にあたり、「ぼや」で食い止めた。これにより、岩崎地域側の北側街区への延焼が阻止されたとみられる。
綾里では2月19日に田浜下地内から林野火災が発生し、25日に鎮火。陸前高田市小友町でも同日に出火し、26日に鎮火した。大規模林野火災を含めた「3度の火災」に、因果関係はないとみる。田浜地域への飛び火は、19日発生の林野火災延焼範囲から外れた場所で確認された。
調査は現在も継続しており、依然として出火原因は「調査中」。3月3日に赤崎町外口地域で多くの建物が焼失した経緯をはじめ、2月26日夕方以降の目撃情報が少ない状況も浮かび上がるという。
委員からは「火災の研究・検証を深めていくために記録やデータの集積を引き続き進めてほしい」といった意見が出たという。延焼面積が3370㌶と平成以降では最大の林野火災となった一方で、「住居への延焼拡大が防止されていることが明らかになった」とのコメントも出た。消防防災無線の不感地帯や情報共有の難しさ、飛び火被害を防ぐ消火活動の重要性なども話題になった。
次回は5月中旬の開催を見据えて調整。月1回ペースで会議を続け、今夏の取りまとめを目指す。