東北初入港 歓迎手厚く 客船「三井オーシャンフジ」 大船渡港 復旧・復興の願いも乗せ(別写真あり)
令和7年4月27日付 1面

商船三井クルーズ㈱(本社・東京都)の客船「三井オーシャンフジ」(3万2477㌧)は26日、大船渡市の大船渡港野々田埠頭に入港した。昨年12月に就航し、東北には初の寄港。岸壁では、市民らが『御祝い』を披露するなど歓迎ムードに包まれた。14年前の東日本大震災直後に、同社が所有していた客船「ふじ丸」による支援活動で訪れた乗組員の姿もあり、大規模林野火災からの早期復旧・復興への願いを込めていた。(佐藤 壮)
午前7時前、晴天が広がったものの、やや霞がかった大船渡湾内に「三井オーシャンフジ」が初めて姿を見せた。優雅な白い船体は、島々や養殖棚が並ぶ景観を楽しむかのようにゆっくりと航行した。
野々田埠頭では、遠藤和子踊り教室や市内事業所、各種団体の関係者ら計60人超が並び、歓迎の舞として定着している『御祝い』を披露した。初寄港に合わせて用意された大漁旗もなびいた。
舞を見守った立根町の遠藤和子さん(79)は「新しい船を見ることができてうれしい。きょうは、天気にも恵まれた。今後もまた来てほしい」と期待を込めた。
歓迎セレモニーでは、渕上清市長が「初めて大船渡に入った記念すべき日であり、心待ちにしていた。ここでしかできない体験を楽しみ、多くの魅力を感じてほしい」とあいさつ。
大漁旗や地元物産品などの記念品を受け取った同船のキム・カールソンキャプテンは「手厚い歓迎は、今までの寄港地で最も素晴らしかった。今後もたくさん寄港できるよう願っている」と述べた。
会場には、物産品の販売テントが並んだほか、乗船客向けにはサンマなどを炭火焼きで振る舞った。埠頭内には多くの市民が訪れ、間近で客船を見上げた。
あかさきこども園に通う須賀健ちゃん(4)は「船を見るのが好き。『飛鳥Ⅱ』とも違う形ですごい」、大船渡小の菅野蓮凪さん(1年)は「学校の授業参観が終わってから来た。でっかいところがかっこいい」と話し、笑顔を見せた。
岸壁では、大船渡・住田定住自立圏共生ビジョンの取り組みの一環で、住田町・五葉山火縄銃鉄砲隊の演武も。午後5時の出港に伴うセレモニーには、第一中学校吹奏楽部が参加した。
「三井オーシャンフジ」は、全長198・15㍍で、全幅は25・6㍍。客室229室で、乗客数は458人。大船渡寄港は、横浜港を発着地とする「ゴールデンウイーク日本一周クルーズ~釜山~」の一環。24日に出発し、25日の終日クルーズを経て、26日の大船渡が最初の寄港地となった。
運航する商船三井がかつて所有していた客船「ふじ丸」は平成23年4月、東日本大震災の支援で大船渡港に寄港。避難生活を強いられた被災者を迎え入れ、食事や入浴のサービスに加え、船内でゆったりと過ごすひとときを提供した。
当時「ふじ丸」のチーフパーサーとして訪れ、現在は「三井オーシャンフジ」でホテルゼネラルマネージャーを務める川野惠一郎さん(63)はこの日、岸壁に降り立ち市民と交流した。
客船「にっぽん丸」でも来港機会があり、大船渡への思い入れは強い。「14年前、皆さんの顔を見て、逆にこちらが元気をもらったのを覚えている。大規模林野火災には『まさか』という思いとともに心配していた。大船渡は、リアス海岸の陸に近い場所を航行し、ここでしか味わえない美しい入港シーンがある。また来ることができれば」と話していた。