指示解除までに9000万円超 売り上げ減「間接被害」明らかに 大規模林野火災避難対象の会員事業所調査  大船渡商議所

▲ アワビ養殖事業者の配管設備をはじめ、産業面での被害は多方面に及ぶ(3月27日)

 大船渡商工会議所(米谷春夫会頭)は、大規模林野火災で避難指示が出された地域に構える会員事業所を対象とした被害状況確認調査の結果を公表した。避難解除直後に実施し、143事業所が回答。建物損壊など直接的な被害を受けたのは27事業所(19%)で、売り上げ減少など間接的な被害は41事業所(29%)に及んだ。間接被害のうち、避難解除までの売り上げ減少額は、総額9000万円超。同商議所では現在、市内約1500に上る会員事業所全体を対象とした調査も進めている。(佐藤 壮)


 避難指示対象は、発生当日の2月26日時点では三陸町綾里の全域と赤崎町の合足地域だったが、27日に同町の蛸ノ浦地区に拡大。28日は同町の中赤崎地区に、3月1日は越喜来の甫嶺東、甫嶺西、上甫嶺の各地域にも広がった。各地に設けられた避難所利用はピーク時で計1200人を超え、3000人超が親戚・知人宅で過ごした。
 事業者に対する被害状況調査は、大船渡商議所と市、県が連携し、第1弾は12日と13日に実施。10日まで避難指示対象となった三陸町綾里の全域と、赤崎町の合足、長崎、外口の各地域に構える会議所会員事業所計約80社を対象とした。19~26日にかけては商議所職員が赤崎町の中赤崎地区や甫嶺地域など7日から段階的に解除された地域でも聞き取りを行った。
 対象162事業所中、143事業者が回答。建設、製造、小売りに加え、農林漁業や不動産業の会員も含まれる。
 直接的被害を受けた27事業所のうち、全焼は7事業所。被害の割合で最も多かったのは「商品・在庫の損害」で15事業所、次いで「設備・機械の損壊」が7事業所だった。
 回答当時における損害額概算は、33事業所で計9億2042万円。最も大きかったのは、三陸町綾里でアワビ養殖を展開する事業所の6億円だった。会員事業所となっている綾里漁協では当時、2億円規模の被害と回答したが、その後の調査で10億円超に上る見通しとなっている。
 損害額のうち、避難対応や取引の停止、売り上げの減少など間接的な被害は約1億円に上る。このうち、避難解除までの売り上げ減少額は37事業者で計9120万円。1事業者平均では247万円で、1事業者で最大の被害額は2000万円だった。
 前年同月と比較した売り上げの減少率(99事業者回答)は、「50%以上減」が18事業所。このうち、3月10日まで避難指示が続いた綾里地区や赤崎町の合足、長崎、外口の3地域で計13事業所を占めた。「30%以上減」が12事業所、「分からない」が23事業所、「減少していない」は30事業所だった。
 今後の事業経営における課題・影響(複数選択可、95事業者回答)で、2割に当たる19事業者が「資金繰りの悪化による仕入れ・運転資金不足」を挙げた。風評被害やキャンセル、イベント中止などを含む「客足・取引の減少」を指摘したのは13事業者だった。大規模林野火災に伴う日本政策金融公庫への融資相談は、避難指示対象外も含め、大船渡商議所管内では18件寄せられたという。
 また、18事業者が「物価高騰(仕入れコスト増加)による収益悪化」、11事業者が「地域全体の人口減少による市場の縮小」を選択。火災前から続く苦境も重くのしかかる状況も浮かび上がった。
 米谷会頭は「避難指示が出た地域にある事業所の半数近くで、直接的、間接的な被害を受けたということになる。この先の道のりは決して楽なものではないと思うが、何とか乗り越えて頑張ってほしい」と話す。
 支援・補助制度に関しては「県をはじめ、比較的手厚いメニューを用意してくれているのはありがたい」と評価。そのうえで、復旧・復興事業で地元事業所を積極的に活用することによる経済循環に期待を込める。
 市内では、宿泊予約や歓送迎会のキャンセルなど、避難指示区域外でも間接的な影響が指摘されている。商議所では今月下旬から、市内の会員約1500事業所を対象に調査を実施。5月中旬を期限とし、影響や必要とされる支援メニューなどへの回答を求めている。