乾田直播の米作り今年も 気仙町の小澤さん 地酒の原料米栽培に初挑戦
令和7年5月2日付 1面

陸前高田市気仙町の畜産業・小澤惣一さん(69)は1日までに、同町の高田沖地区の農地で「乾田直播」による稲の種まき作業を行った。今年は飼料米に加え、初めて酔仙酒造㈱の特別純米酒「多賀多」の原料米も栽培。高齢化に伴う農業の担い手減少を見据えた6年目の取り組みで、人手不足解消のモデルケースとなるよう実践から知識を蓄える。
乾田直播は、圃場に直接種もみをまき、発芽後に水を張る栽培法。事前に苗を作ることや代かきなどが不要なことから、従来の田植えと比べて作業の省力化が図られる。海外をはじめ、国内でも普及が進んでいる。
小澤さんは、令和2年から乾田直播で牛の飼料用の稲を栽培。農家の高齢化が進む中、東日本大震災後に整備された高田沖地区の広い農地が将来にわたって有効利用されるよう、少ない人数でも持続可能な農業の仕組みを模索している。
栽培面積は年々拡大しており、今年は前年比1㌶増の約6㌶。4月28日、30日、今月1日の3日間、大型農機の播種機を使って「ひとめぼれ」の種もみをまいた。
小澤さんは「はじめは雑草対策に悩まされた時期もあったが、試行錯誤を繰り返し、今では改善している。やり方さえ覚えれば従来の田植えよりも楽という実感があり、昨年も順調に収穫できた」と今年の豊作にも期待を寄せる。
今までになかった試みとし、0・3㌶では多賀多用の稲を育てる。多賀多は、平成17年の市政施行50周年に合わせ「米、水、造り手すべて地元産」をコンセプトに製造が始まった地酒で、地元内外に愛される地場産品の原料確保にも挑戦する。
将来的には、圃場の乾き具合に左右されず種まきができるドローンを導入することも考えているという。小澤さんは「震災後、せっかく整備してもらった農地を休耕田にはしたくない。酒米用の稲は、実用可能な米が実るよう期待する」と見据える。