〝再発〟防止求める声も 木工団地問題 町の住民説明会スタート 和解までの経緯など説明 

▲ 住民説明会がスタート。初日は五葉地区公民館で行われた

 住田町から多額の融資を受けながらも破産した三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)を巡り、町が連帯保証人とその相続人に対して融資の未返済分や遅延損害金などの支払いを求めた裁判の和解が成立したことに伴い、町当局は1日、住民説明会を開始した。初日は上有住の五葉地区公民館で開かれ、住民側からは和解に理解を示す声があった一方で、問題を総括し、再発を防ぐよう求める意見も寄せられた。説明会は9日(金)までの間、町内5カ所で行われる。(清水辰彦)


 両事業体は、平成19年に経営危機が判明。町から両事業体合わせて約7億9000万円の公金融資を受けて経営再建を進め、26年度から年度当たり約3100万円を町に償還する計画だったが、定められた額の償還ができない状況が続いた。このため、町は29年、両事業体や連帯保証人に立木未収金を含めた計10億円超の支払いを求める調停を大船渡簡易裁判所に申し立てたが、支払い提示額との開きがあり不調に終わった。
 その後、両事業体は事業継続を断念し令和2年7月末、盛岡地方裁判所一関支部に破産を申請。同8月に同支部から破産手続き開始決定を受けた。
 両事業体の破産申請後、ランバーはけせんプレカット事業協同組合の製材工場、三木は集成材工場として稼働しており、事業そのものは「一本化」して継続している。
 同10月、町は連帯保証人とその相続人計19人に対し、農林業振興基金からの貸付金残金と利息、違約金など合わせて約10億5000万円の支払いを求めて同支部に提訴。
 提訴以降、被告19人のうち3人に判決が出たほか相続放棄もあり、残る12人が町と争ってきたが、今年2月25日に盛岡地裁から和解案が提示された。案は、12人が合わせて1億8948万円を町に支払うもので、3月19日、原告、被告双方が合意して和解が成立。同月中に入金も確認されたという。
 両事業体に関する住民説明会は、令和2年の提訴時以来。初日は地域住民ら6人が出席し、町側からは神田謙一町長、小向正悟副町長、佐々木暁文林政課長、町議会議員らが臨んだ。
 冒頭、神田町長が「法的に、これ以上の回収は困難であると判断した。全額回収に至らなかったことは遺憾だが、ご理解いただきたい。同様の事態を防ぐため、債権管理、リスク管理を図っていく」とあいさつ。
 説明では、訴訟提起から和解成立までの経緯、訴訟上の被告側の主張などについて住民に明かされた。町の説明によると、5年3月、被告側から訴訟上の和解の可能性について言及されたといい、裁判所の主導で和解に向けた協議が行われてきた。
 和解に応じる条件として、町では相手方に対して▽町側の請求額全額について支払い義務があることを認める▽農林業振興資金からの貸し付け手続きについて瑕疵、違法性がなかったことを認める──などを主張し、これらが認められることを前提に置いて、債権回収の可能性や早期解決といった観点で和解の受け入れを検討。
 町としては、判決が出て勝訴したとしても、支払いがなされない場合は回収が難しく、和解であれば全額回収は不可能だが合意した金額は回収できること、判決までいけば控訴・上告によるさらなる長期化が懸念されることも踏まえたうえで、和解に応じた。
 説明後の意見交換では、住民側から「基本的に説明には納得したが、もう一度この問題を総括・反省し、このようなことが二度と起きないように努めてほしい」「(融資全額を)回収できる保障がない中でズルズルやるよりは、和解してよかったのではないか」と和解への理解を示す声が上がった。
 一方で、「そもそも、戻ってくることを見越して融資したのか」との質問に対して、町側では「元々の部分は分からないこともあるが、事業体の存続には必要な融資であるとの判断だったのではないか。結果として、事業は一本化して継続されていることはプラスに捉えていただければ」と答えるにとどまり、根本的な原因に立ち返っての議論は深まらなかった。
 説明会は2日、大股地区公民館でも開かれた。今後の日程次の通り。時間はいずれも午後7時から。
 ▽7日=下有住地区公民館▽8日=上有住地区公民館▽9日=役場町民ホール