2次被害防止 ボランティアとともに 大規模林野火災 散乱する被災木搬出 沢沿いの住民不安に対応 県外在住登録者も初めて動員(別写真あり)
令和7年5月6日付 1面

大船渡市大規模林野火災を受け、焼失した山林の土砂流出や、焼け落ちた樹木が沢をふさぐことによる氾濫など、2次被害への不安が日増しに強まっている。被災地では大型連休中の4、5の両日、市と市社会福祉協議会が設置した災害ボランティアセンターに予備登録をしている県外在住者も参加し、沢沿いにある枝などの搬出作業が行われた。被災地域は高齢化が進み、人手確保は深刻な課題。梅雨時期が近づく中、今後も同センターでは地域に根ざした活動を見据える。(佐藤 壮)
活動が行われたのは、2月26日に出火した大規模林野火災だけでなく、19日発生の林野火災でも被災した三陸町綾里の田浜地域。県内外から集まったボランティアや、地域住民らが作業にあたった。
参加者は、沢沿いに散乱する黒く焦げた幹や枝を手作業で集めた。沢の対岸に立つ別のスタッフが手渡しで受け取ると道沿いに並べ、まとまると軽トラックの荷台に積んで仮置き場に運ぶ地道な作業が続いた。
沢沿いには、火災で半壊被害や損傷を受けながらも、避難生活から戻った住民が暮らす住宅が並ぶ。これまでも、大雨時には沢から水があふれ、道路を流れることがあったといい、2次被害への心配は尽きない。今月も雨が降れば、濁った泥水が流れ、不安は日々増している。
住民の一人は「火災で雨のたびに地形が変わっていく。このまま放置していれば必ず、沢から水があふれ、被害にあってしまう」と話す。
ボランティアセンターが地域のニーズを把握する中で不安の声を聞き、活動に結びつけた。ともに作業にあたった田浜地域の村上哲也さん(69)は「高齢化が進み、地域住民だけではできない作業。『ありがたい』のひと言に尽きる」と感謝する。
大規模林野火災に伴う災害ボランティアセンターは、2月末に設置。これまでは、気仙地区在住者を中心とした派遣を続けていた。
一方、予備登録者は県外在住者を含め約2000人に及ぶ。今回の活動では初めて、県外在住者の参加も受け付けた。両日合わせて約80人が参加し、半数以上が県外から駆け付けた。
青森県青森市の鈴木浩文さん(61)は、能登半島地震や秋田県豪雨災害の各被災地でも作業にあたった経験がある。「陸前高田に恩師がいるので、情報をやり取りしながら、受け付け開始直後に登録していた。火災現場の活動は初めてで、地震や洪水とは作業が異なり、ベテランの方々や地域の皆さんとしっかり確認しながら進めることが大切だと思う」と話した。
両日とも、大船渡青年会議所のメンバーらが現場付近で炊き出し活動を展開。被災者だけでなく、支援で訪れる人々の活動を後押しすることで、実情に合った復旧・復興の輪が広がりつつある。
ボランティアセンターとともに活動調整にあたるNPO法人おおふなと市民活動センターの菊池広人代表は「自宅に戻ることができても、大雨などへの不安を感じている地域は多いのではないか。今後も、ニーズを把握しながら、地元外のボランティアを生かした活動をつくりたい。活動を通じて、大船渡にかかわる人を増やすことにもつながれば」と語る。