飛び火に負けずピンク色鮮やか 幹焼けるもたくましく 綾里・田浜に「奇跡のヤエザクラ」

▲ 幹の上部と下部が黒く焼け焦げながらも花を咲かせたヤエザクラ

 大船渡市大規模林野火災で被災した三陸町綾里の田浜地域で、根元部分と伐採した上部が黒く焦げたヤエザクラから花が咲いた。飛び火の猛威が色濃く残る中でピンク色の彩りが映え、「奇跡のヤエザクラ」として地域に希望をもたらしている。    (佐藤 壮)

 このヤエザクラは田浜地域の民家が並ぶ沢沿いに伸び、高さは2㍍ほど。上部は傷んだことから伐採したが、幹から枝が伸び、昨年以前も花がついていた。
 現在は、伐採した付近と下部が焼け焦げている。2月26日に出火した大規模林野火災で飛び火に見舞われたとみられる。近くの建物でも全焼被害があったほか、周囲の山林の木々が黒く焦げ、火災の恐ろしさが今も色濃く残る。
 それでも、火の手をまぬがれ、樹皮が残る部分から伸びる数本の枝先につぼみがつき、避難生活から戻った住民らは、開花への期待を膨らませながら見守った。先月から花をつけ、そのたくましさとピンク色の華やかさが目を引く。
 近所に暮らす住民の一人は「来年はどうなるか分からないが、生命力はすごいと思った。とにかく、今年も立派に咲いてくれて良かった」と話し、笑顔を見せる。
 ヤエザクラのそばを流れる沢は、被災した木々がふさぐことで、まとまった降雨時の氾濫が懸念される。4、5の両日には、災害ボランティアセンターに予備登録をしている県外在住者らが集まり、人力で搬出作業にあたった。休憩場所に向かう際などに目にした参加者からは「すごい」などと声が上がったほか、スマートフォンで撮影する姿も見られた。