初夏告げるウニ漁スタート 気仙トップ切り大船渡湾内で 火災被災地では漁具調達進む(別写真あり)

▲ 長年の経験と巧みな技術でウニを捕獲する漁業者=大船渡町

 大船渡湾内で9日、気仙沿岸のトップを切ってウニ漁がスタートした。早朝から漁を行う漁業者らの活気に満ちあふれ、集荷場には〝初夏の味覚〟とされる黄色い身がずらりと並んだ。大規模林野火災で漁具を焼失した漁業者もおり、被災地域の漁協では支援を活用した漁具の調達が急ピッチで進む。例年通りとはいかない状況の中、初日の数量は昨年を上回り、関係者らは今後の漁況充実に期待を込める。(菅野弘大)

 

集荷場には鮮やかな黄色のむき身が並んだ=赤崎町

 例年、大船渡湾内では大船渡市漁協の赤崎、大船渡両支所が現品入札のウニ漁をこの時期に実施。東日本大震災後は、平成27年から毎年行っているが、令和2年は新型コロナウイルスの経済面への影響で買い手の動向が不透明だったことから現品入札を見合わせ、3年から再開している。
 大船渡町の下船渡漁港南側では同日、解禁時間の午前5時30分前から小型船約20隻が海上で待機し、一斉に漁を開始。雲一つない青空のもと、船から身を乗り出して箱めがねで海中をのぞき、カギさおやタモ網を巧みに操って次々とウニを捕獲していった。漁業者同士で会話を交わす姿も見られ、漁に出た漁業者からは「雨が降った割には水の透明度も高く、数も例年よりいる気がする」といった声が聞かれた。
 各漁港では、家族総出での殻むき作業が行われ、赤崎町の集荷場には、つややかに輝く黄色い身が入ったカゴが並んだ。出荷した同町の大澤幸男さん(84)は「水温も下がり、ウニのえさとなる海藻も増えて実入りは昨年よりもだいぶいいようだ。資源も回復してきているのでは」と手応えを語った。
 現品入札が行われた県漁連南部支所などによると、初日の水揚げ数量は64・1㌔で、昨年を6・8㌔上回った。1㌔当たりの金額は1万3880円~1万3000円で、最高値は昨年比で1620円下落した。
 気仙沿岸のウニ漁は例年、湾内から始まり、その後湾外や各漁協でも開口する。漁が本格化するのは今月後半からとみられるが、大規模林野火災で多くの漁業者が被災した三陸町綾里の綾里漁協では、漁具焼失の状況などを考慮して5月中の開口は見送り、漁具の調達期間に充て、状況を見ながら解禁時期を判断することとしている。
 赤崎町に本所を構える市漁協でも、被災した漁業者の要望を踏まえて漁具を発注している段階で、「前例のない対応だが、5月後半の湾外での漁に間に合うように動いている」とする。
 気仙地区を対象とする今月後半分の生ウニ事前入札会は、12日(月)に同支所で開かれる。気仙沿岸のウニ漁は例年、8月まで行われる。