越喜来のトマト農場完成 いわて銀河農園が整備 被災跡地生かし県最大規模(別写真あり)
令和7年5月10日付 1面


産業振興や地域活性化を願いながら記念撮影
東日本大震災の被災跡地を大船渡市が産業用地として整備した三陸町越喜来沖田地内で、㈱いわて銀河農園(橋本幸之輔代表取締役、末崎町)による大規模なトマト生産技術高度化施設「越喜来農場」が完成した。県内最大規模で、7月中旬ごろの初出荷を見込む。同社は末崎町の被災跡地にも設備を構え、2拠点体制によって同市は東北でも有数のトマト産地となる。
竣工式・落成式が9日に開かれ、同社や県、市、施工関係者ら約50人が出席。竣工式では神事が執り行われた。
落成式では、橋本代表取締役が「地域の生活そのものだった大切な土地を託していただき、身の引き締まる思い。農業の新しい形を、全国の皆さんとともにつくる」とあいさつ。達増拓也知事の祝辞を県農林水産部の佐藤法之部長が代読したほか、渕上清市長と伊藤力也市議会議長が今後の生産活動による地域活性化に期待を込めた。
記念撮影に続き、農場見学も行われた。出席者は自動化された集出荷設備や、長さ約200㍍に225レーンを設ける広大な生産スペース、日照時間が短い時期の対応策、内外気循環設備など、最新設備を生かした運営に期待を膨らませた。
いわて銀河農園は、平成29年に市と企業立地協定を締結。震災で被災した末崎町小河原地区(大田地内)の被災跡地に約1・5㌶の農場を含む生産技術高度化施設を整備し、令和元年から出荷が本格化した。現在、従業員50人規模の体制でトマト生産にあたる。
同社によると、越喜来での施設面積は2・87㌶で、このうち栽培面積は2・43㌶と、県内最大規模。鉄骨ハウスを整備し、日射が少ない時期でも光を確保するLEDによる補光設備など、最新技術も取り入れる。
昨年3月に安全祈願祭を行い、整備が本格化。産地生産基盤パワーアップ事業として市からも補助金を受けた。
ミニトマトの計画生産量は年間655㌧。従業員は正社員、パート雇用、海外人材を含め最大約100人を見込む。
6月2日(月)~4日(水)に苗の納品があり、初出荷の予定は7月中旬ごろ。区画ごとに苗を入れる時期をずらし、通年出荷を見据える。末崎を合わせると約4㌶の生産規模となり、東北有数のトマト産地となる。
完成した三陸鉄道三陸駅東側の沿岸部は、東日本大震災では甚大な被害を受けた。かつて越喜来小学校や住宅地、農地だった一帯で、市は被災地の利活用と産業振興に向け、防災集団移転促進事業による移転元地と、地権者の協力を得た周辺民有地を集約。産業用地として整備した4・8㌶を貸し付けた。