台湾被災地が一本松に注目 防災啓発のモデルに 佐々木市長が訪台 現地でのフォーラム出席 見舞金の感謝も伝える
令和7年5月11日付 1面

陸前高田市の佐々木拓市長は4月26日~5月1日、台湾を初訪問した。中心部に位置する南投県には土砂災害で唯一残った熱帯果樹の「リュウガン(竜眼)」の木があり、地元では同市の東日本大震災復興のシンボル「奇跡の一本松」をモデルに、防災教育の象徴などとして保存・活用できないか検討されているという。市長は関連する防災フォーラムに招かれ、一本松について紹介した。震災発生から11日で14年2カ月。台湾からは発災後、被災者に見舞金が給付されており、市長は当時の海を越えた支援に対して直接謝意を伝えた。(高橋 信)
きょう震災14年2カ月
市長の訪台には、中村吉雄防災局長、市国際連携シニアアドバイザーの村上清氏らが随行し、関西学院大学(兵庫県)の長峯純一教授も加わった。
市によると、フォーラムは津波に襲われながら約7万本の松林の中で唯一残り、震災遺構として保存されている奇跡の一本松について学ぼうとのもの。主催者から招かれた市長や中村防災局長、村上氏が登壇し、保存に至った経緯などを説明した。
滞在中、市長らは台湾の仏教系の慈善団体「台湾佛教慈濟慈善事業基金会」の本部を訪れ、熊士民副執行長に面会した。

震災後、被災者に見舞金を支給した台湾佛教慈濟慈善事業基金会の本部(同)
同団体は震災直後、気仙両市の避難所13カ所に食品や衣類計20㌧の支援物資を配布。平成23年6~12月には被災3県の住家半壊以上の被災者9万6974世帯に、世帯人数に応じて3~7万円の見舞金を支給した。陸前高田市では3574世帯に計1億726万円が配られた。
同団体は今年4月、大船渡市大規模林野火災の住家被災世帯に対しても見舞金を即日支給した。
佐々木市長は「大変ありがたい支援をしていただいた。台湾からの善意を決して忘れない」などと、熊副執行長に伝えた。
このほか、市長らは最高立法機関・立法院や交通部観光署、内政部消防署などを訪問。関係者と防災・観光分野の相互連携の可能性などについて意見交換した。
災害多発地として知られる台湾。唯一の内陸県の南投県では平成13年7月に起きた台風8号で、豪雨による土砂災害が発生し、甚大な人的・物的被害を受けた。被災エリアには奇跡的に残ったリュウガンの木が1本あり、国立成功大学(本部・台南市)の教授や地元選出の国会議員らが防災教育の推進や地域防災のシンボルとしての保存・活用を構想している。
同大の関係者らは昨年9月、包括連携協定を結ぶ関西学院大などの仲介で、陸前高田市役所を訪問し、佐々木市長と意見交換した。
市長は震災後のハード復旧が一段落した状況を踏まえ、被災者支援に当たった台湾の関係機関などに直接感謝の気持ちを伝えようと訪台を決めた。訪問を振り返り、「震災当時は緊急的な状況にあり、台湾からの見舞金の詳細を庁内でもしっかりと把握できておらず、こちらから出向いてお礼を言えて良かった。支援をいただいたという経緯もあり、南投県などに対し、市として協力可能なことがあればしたい。防災、観光などの相互連携については今後の検討材料とする」と話した。