養殖サーモン水揚げ開始 待望の2季目 広田湾漁協などが試験実施(動画、別写真あり)
令和7年5月15日付 1面
陸前高田市の広田湾漁協(砂田光保組合長)などが広田町で試験的に実施している海面養殖サーモンの今季水揚げが、14日に始まった。試験養殖は2季目を迎え、前季からのギンザケに加え、新たにトラウトサーモンも育ててきた。水揚げは7月上旬までを予定し、数量は2魚種合わせて200~250㌧を見込む。関係者は本格養殖に向け、区画漁業権の年内取得を目指している。(高橋 信)
水揚げ作業は広田町の広田漁港で行われ、海面いけすで育てた重さ1・5~1・8㌔のギンザケ合わせて約6㌧を引き揚げた。いけすからたも網ですくわれたギンザケは銀白色のウロコを光らせ、作業員は氷水をためたコンテナに手際よく入れた。
水揚げ開始は前季より約3週間早めとなり、6月から本格化する計画。工場で1次加工し、一部は市内の飲食店などに出荷する見通しという。
一方、今季から新たに養殖を始めたトラウトサーモンは、近く初水揚げする。業者から購入した種苗を、空き施設となっている漁協のサケ・マスふ化場(矢作町)を活用して中間育成したうえ、広田漁港そばの海面いけすに移して育ててきた。
シーズンを通した水揚げ量はギンザケ100~150㌧程度、トラウトサーモン100㌧程度を見込んでいる。
県がまとめた令和6年度最終版の秋サケ漁獲速報によると、県全体の沿岸・河川累計捕獲数は4万3078匹。前年度(4万4300匹)から2・8%の微減で、過去最低を更新した。16万匹台だった4年度と比較して約4分の1と深刻な不漁となっている。
こうした中、注目が集まっているのが養殖サーモン。本県を含め、不漁の秋サケを補完しようと、養殖に乗り出す動きが全国的に活発化している。
陸前高田市での試験養殖は、広田湾漁協が水産大手の㈱ニッスイ(本社・東京都)との合同で一昨年冬に開始。湾内と沖合の2カ所にいけすを1基ずつ設置し、サーモンを育てながら周辺の海洋環境や他の漁業活動への影響がないか調査している。
1季目はギンザケのみを扱い、昨年6月5~28日に水揚げ。市によると、数量は約180㌧だった。関係者は年内にも本格的な養殖事業へと移行させたい考えで、区画漁業権の取得を目指す。将来的には年間数千㌧の生産を見込んでいる。
同漁協業務課の戸羽新二課長は「秋サケの不漁が深刻な中、新たな手法でサーモンを成育する取り組みは良いことだ。ただあくまで試験養殖の段階で、まずは養殖が問題ないか確かめることが重要。本格的に養殖が始まったあとは陸前高田のサーモンとして知名度が上がればいい」と話した。






