お試し親子移住 実施を検討 今秋、モデルツアーを計画
令和7年5月16日付 7面

陸前高田市は、都市部などに住む子育て世帯を対象に、未就学児を市内保育施設に一定期間通わせ、その間、家族で滞在してもらうお試し移住プログラムの実施を検討している。来年度以降の運用を目指し、今秋にモニターツアーを実施する計画。自然豊かで、伸び伸びと子育てできる田舎ならではの暮らしを体験してもらい、若い家族の移住・定住促進を狙う。
取り組みは「保育園留学」として、全国の地方自治体で広がっている。市は「地方移住に興味があるが、子どもを預けられないため田舎暮らしを体験できない」「移住する前に現地の子育て環境を確かめたい」などという家族のニーズに応えようと、保育施設と連携したプログラム構築を模索している。
本年度は、9月ごろに2泊3日のモニターツアーを実施する計画。それに先立ち、現在、全国の子育て世帯を対象にアンケート調査を行っており、子育て支援や保育・教育環境のニーズ、地方移住の関心度などを確かめたうえ、ツアーの中身の検討に入る。
一連の企画・運営は、市からの委託を受け、NPO法人高田暮舎が担当。アンケートは、同法人運営の移住定住ポータルサイト「高田暮らし」から回答できる。
担当者の同法人移住コンシェルジュ・石田裕夏さん(37)は令和5年春、夫と、当時未就学児の長男との3人で京都府城陽市から陸前高田へと移住した。
石田さんは「自然がいっぱいで、犯罪も少ない。周囲にあまり気を使わずに、子どもを伸び伸びと遊ばせることができる。医療資源が乏しいのが悩みだが、医療費無償化など家計の負担を減らす補助は手厚い」と魅力を語る。
長男は小学2年生となり、「登校時に地域の方々が見守ってくれるのが一番ありがたい。こうした温かな協力体制は陸前高田ならではだと思うし、親としては安心して送り出せる」と感謝する。
来年度以降のプログラムは、モニターツアー後に検討する。子どもは保育施設の一時預かりを活用して通わせ、滞在中の住まいとして空き家を用意する方針。通年で受け入れる構想で、サポートは高田暮舎が当たる。
石田さんは「移住には不安もつきまとうが、事前に体験することで実際の暮らしをイメージできる。『ここなら楽しく子育てできる』と思ってもらえるようなプログラムを展開できるよう検討したい」と力を込める。(高橋 信)