宿泊客に最大4000円分助成 6月下旬から「大船渡復興割事業」開始へ 大規模林野火災からの回復見据え
令和7年5月17日付 1面

大船渡市は、市内の宿泊施設を利用する観光客に対し、1泊当たり上限3000円の助成と、飲食店で使用可能な1000円分のクーポン券を配布する「大船渡復興割事業」の実施を目指す。大規模林野火災を受け、市への旅行を見合わせる動きが見られる中、19日(月)の市議会臨時会に財源を盛り込んだ一般会計補正予算を計上。宿泊事業者との調整を経て、6月下旬からの開始を見据える。(佐藤 壮)
市によると、商工・観光業関係における間接的な被害は、今月14日までの段階で48事業者、1億6265万円に上る。このうち、予約キャンセルや停電に伴う冷凍冷蔵庫の商品損傷を合わせると、4000万円程度の被害を見込み、風評被害を含めた影響額はさらに増加が予想される。
避難指示対象外となった地域に構えるホテルや飲食店でも来訪を見合わせる動きがあり、「今、訪れていいものか」「迷惑にならないか」といった声を受けることもあるという。観光需要の喚起と地域経済の回復に加え、歓迎体制を広く発信する目的もある。
こうした中、1泊当たり3000円を上限に、宿泊事者に宿泊料金の一部を補塡する。さらに、宿泊客には市内の飲食店などで使用できる1000円分のクーポン券が配布される。
市内の宿泊施設を利用する観光宿泊客が対象で、3000円の場合は1万泊分の助成を計画。利用期間は6月下旬~11月末までとするが、宿泊料金の助成額が予算額に達した場合は終了となる。
現在、宿泊事業者に対し、現状や今後の宿泊見込みなど営業状況に関する聞き取り調査を行っている。寄せられた意見、要望の反映を検討しながら、より回復効果が高まる形を目指す。首都圏や仙台近郊で開催される観光キャラバンや物産販売事業との連動も見据える。
今回の事業に関しては、能登半島地震被災地での取り組みを参考にした。また、市はコロナ禍に「大船渡に泊まってHappy!大作戦」と称し、第1弾は令和2年9月~3年2月、第2弾は同年7月~4年1月に、第3弾は同年9月~5年1月に実施した。
第3弾は市内16施設が参加し、利用期間満了前に予約を締め切る施設も見られた。家族やグループでの宿泊に加え、スポーツ少年団による団体利用もあったという。
東日本大震災の復興事業で整備された大船渡駅周辺地区には、宿泊施設や飲食施設が多く進出。宿泊客の受け入れ環境は、沿岸部でも強みの一つとなっている。
市内の昨年における観光入込客数は、前年を2・1%上回る65万953人だった一方、宿泊者数は前年比6・8%減の12万9192人。台湾からの団体や、みちのく潮風トレイルを巡るハイカーが目立ったものの、いずれもコロナ禍前の令和元年実績には戻っていない。近年、宿泊業は、エネルギー価格高騰による影響でも苦境が続いている。
渕上清市長は「観光施設は、平時の運営をしている。ぜひ足を運んでもらい、元気なまちに向かっていく様子を肌で感じていただきたい。現地を見ていただき、火災が『起こってはならない、起こしてはならない』ということも感じ取ってもらえれば。予防策や、今後のまちのあり方などにも思いを巡らせてほしい」と期待を込める。