「木造の住まい」ゆっくりと 旧蛸ノ浦小の建設型仮設住宅で入居開始 大規模林野火災 発災3カ月を前に(別写真あり)
令和7年5月18日付 1面

大船渡市赤崎町の旧蛸ノ浦小グラウンドに整備された大規模林野火災被災者向けの建設型応急仮設住宅で17日、入居が始まった。7戸が完成し、入居は外口地域の被災世帯が中心。引っ越しや生活用品確保で当面は避難所を行き来する見込みの世帯も見られるが、木造の住まいに入った住民は、発災から3カ月を前に新たな生活への希望を膨らませた。旧綾里中グラウンドの仮設住宅では、24日(土)に入居が始まる。 (佐藤 壮)
市役所で16日に鍵の引き渡しが行われ、入居を予定している7世帯すべてが受け取った。17日は降雨に見舞われたが、住民が下見で訪れたり、荷物を運び入れる様子が見られた。
外口地域で被災し、2カ月以上にわたり、立根町の県立福祉の里センターで避難生活を送る袖野里子さん(70)は「自分の部屋ができたのは、やはりうれしい。避難生活はテントだったので、どうしても声が聞こえるから。(外口には)タマネギ畑もあるので、通いやすくなる。一歩前に進んだかな」と、笑顔を見せた。
「顔見知りの人たちで安心」とも話し、窓越しに住民が見えると、手を振りながらあいさつを交わした。一方、住宅内で落ち着いて過ごす時間は少なく、今後の生活準備に頭を巡らせた。「例えば、げた箱とか洗濯機のそばに置く棚とかがないと。これからそろえないといけないものもある。あと1週間くらいは、福祉の里でお世話になると思う」と語った。
火災前に住んでいた息子家族は、ともに避難生活を過ごし、現在は公営住宅に入居。今後は、外口地域に住宅を再建し、一緒に暮らす日を待ちながら生活を送る。
別の住宅に下見で訪れた80代の女性も「畳敷きの部屋が良かった。これからの部屋割りが楽しみ」と話した。5人で暮らす予定で、家族の日程がつく今月中に引っ越すという。
県や市は、避難生活の解消と早期再建に向け、被災した赤崎町外口の16世帯、綾里の46世帯に対し、仮設住宅の提供を進めてきた。建設型は3月10日、市が県に対して整備を要請し、2カ所で建設に着手した。
いずれも、木造の長屋建て。建設戸数は蛸ノ浦が7戸で、綾里が26戸。間取りは2Kと3Kに加え、家族が多い世帯向けに2Kと2K、3Kと2Kを組み合わせた形も確保した。入居戸数は蛸ノ浦が7戸、綾里が19戸となっている。綾里の入居者に向けては、23日(金)から鍵の引き渡しを行い、24日(土)には入居が始まる。
民間アパートなどの「みなし仮設住宅」は12世帯で、すべて入居済み。内訳は盛町2世帯、大船渡町と猪川町がそれぞれ3世帯、赤崎町が4世帯となっている。
公営住宅は県営8戸、市営10戸の計18戸。県営は盛町4戸、大船渡町1戸、猪川町3戸で、市営は赤崎町2戸、猪川町3戸、綾里5戸。3月27日~4月8日の第1次申し込みには、12戸に対して21世帯が申請。4月11日~4月23日の第2次申し込みでは、入居できなかった9世帯のうち5世帯が申請したほか、新規でも1世帯を受け付けた。
このほかに「被災家屋を修理する」や「身内と一緒に暮らす」といった意向は6世帯となっている。
市は現在、立根町の県立福祉の里センターと綾里の綾姫ホールに避難所を開設。閉鎖の見通しについて「検討段階で未定だが、災害救助法の適用が『応急仮設住宅ができるまで』とあり、現時点では5月末までとなる。延長に関しては、避難者の状況を確認し、必要に応じて県や国と協議する」としている。入居開始後も、仕事の都合で物をすぐに運び入れることができないといった状況や、生活するうえで必要な物がそろわないといった理由での避難所利用が考えられるという。
仮設住宅の各戸には、エアコン、ガスコンロ、カーテン、照明器具を設置。公営住宅や賃貸型と同様に、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、テレビ、電子レンジ、電気ポットの6点セットも配備する。さらに、ピースウィンズ・ジャパンが入居者の希望に添った生活家電支援を行っており、市も包丁やフライパン、掃除・洗濯用品などの生活必需品支給を進める。