岩手産新商品を欧州市場へ 精米歩合80%のオリジナル純米酒 八木澤商店や酔仙酒造など 夏ごろには地元で販売(別写真あり)
令和7年5月20日付 7面
陸前高田市の㈱八木澤商店(河野通洋代表取締役)と酔仙酒造㈱(金野連代表取締役社長)、遠野市の米農家・勘六縁(菊池陽佑代表)は、精米歩合80%と磨きを減らした米による新たなオリジナル純米酒の製造を進めている。勘六縁が無肥料・無農薬で栽培した米を原料に、酔仙酒造が米本来のうまみや重みが味わえる純米酒を造り、八木澤商店が今月立ち上げたイタリア支社を通じてヨーロッパ市場に売り出す予定。夏ごろには、気仙町の陸前高田発酵パークCAMOCYでも販売する計画だ。(三浦佳恵)
八木澤商店と酔仙酒造、勘六縁は、県内の企業で構成する岩手穀物輸出コンソーシアムに所属。昨年秋のコンソーシアムの会合で河野社長(51)が勘六縁の米を使った日本酒造りを提案し、実現した。
現在、国内外では精米歩合50%以下の純米大吟醸酒のように、すっきりとした飲み口と華やかでフルーティーな味わいの日本酒が人気。今回は、こうした傾向とは差別化を図り、原料の米を生かした酒を目指し、玄米を磨く量を2割に抑えた精米歩合80%の純米酒に挑戦した。海外からの関心も高いという。
原料のササニシキは勘六縁から八木澤商店が仕入れ、約150㌔を使用。これに、気仙の水と酔仙酒造が自社開発したこうじなどを用い、今月16日に仕込み作業の第一段階として、蒸して冷ました米と水、こうじなどをタンクに入れる「初添え」が行われた。
19日は第2段階の「仲仕込み」が行われ、同社杜氏の金野泰明取締役(48)や八木澤商店の社員らも加わって作業を展開。蒸し上がった米を広げて冷まし、初添えで仕込んだタンクの中に投入した。
20日には第3段階の「留仕込み」を行い、3週間ほどでもろみから原酒を絞り出す上槽作業を計画。約400㍑の生産を見込む。
金野取締役は「初めての経験だが、味に重みがあり、甘みを残しながらもキレがある酒にできれば。同じところで同じものを作り続けていくのは大事だが、今後は新しい取り組み、異業種との交流も進めていかなければならない」と話す。
出来上がった純米酒は、夏ごろに八木澤商店の商品としてCAMOCY内の発酵MARKETで販売。このほか、今月13日にイタリアのヴェネト州ヴィチェンツァ県に設置したイタリア支社「musubu」(小山田美弥子社長)でも取り扱い、ヨーロッパ市場への販路開拓にも挑む。同社では自社商品をはじめ、現地で取り扱いが少ない東北、北海道の品々も販売していく考えだ。
河野代表取締役は「昔からの仲間と酒造りをするのは長年の夢だったので、かなえられてうれしい。岩手の米をなるべく磨かず、大事に使った酒を海外に知ってもらうのは、日本を知ってもらうことにもつながる。自社商品のみならず、東北のいいものを輸出していきたい」と意気込む。






