飛び火警戒の見直しを 大規模林野火災を踏まえ方向性 同時多発的な住家被害教訓に 東京で検討会

▲ 検討会終了後に議論内容を説明する関澤座長(中央)

 消防庁と林野庁による「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」が19日、東京都内で開かれ、予防・警報や消防体制、多様な技術活用、災害復旧など、今後の取り組みの方向性を取りまとめた。予防・警報では、火災警報の発令が低調な実態を指摘。大規模林野火災では飛び火などで同時多発的に住家被害が発生した状況も踏まえ、飛び火警戒要領の見直しを掲げた。監視や残火処理も含め、ドローンのさらなる活用なども見据える。(佐藤 壮)

 

 検討会は、日本防火技術者協会理事長の関澤愛氏が座長を務め、委員は大船渡市消防団の大田昌広団長や県女性消防連絡協議会の佐藤菊子副会長、県森林組合連合会の澤口良喜代表理事専務のほか、学識経験者らで構成。気象庁や防衛省がオブザーバーに入る。
 先月23日以来3回目の開催で、委員19人が出席。会議は非公開で行われ、終了後に関澤座長や消防庁、林野庁の関係者が説明した。
 この日の議題は▽森林法第21条による火入れの状況▽火災警報の運用状況▽諸外国や他分野における技術例▽米国や韓国における林野火災の対応▽大船渡市林野火災を踏まえた取り組みの方向性──の5点。
 取り組みの方向性のうち、予防・警報のあり方に関しては、乾燥・強風時に、市町村長は火災警報を発令し、火入れや焚き火といった火の使用制限を行うことができるものの、実態として低調な状況が見られる。的確な警報発令に加え、火入れや焚き火を行う際の火の取り扱いを徹底し、林野火災予防の実効性を高める必要性を挙げる。
 広報・啓発の強化では、林野周辺の住民やハイカーらに対する呼びかけを重視。議論では、火災警報が発令された際、住民・林業関係、ハイカーといった属性に合わせた周知を強調する意見も寄せられたという。
 出火直後には、急激な延焼拡大や飛び火などにより、初日の時点で広範囲に延焼した。これを踏まえ、ヘリやドローンなどを活用し、夜間も含めて災害状況を的確に把握する必要性も指摘。早期の応援要請など「受援計画」の明確化も挙げる。
 同時多発的に住家被害が生じた状況を勘案し、飛び火警戒要領の見直しも盛り込んだ。情報把握体制の強化や応援などによる消防力の確保、予防散水を含めた機動的・継続的な放水体制にも言及している。
 飛び火は激しい燃焼地から数百㍍先にも及び、より俯瞰的な情報からの警戒が求められるという。高所からの監視として、ドローン活用の重要性が浮かび上がる。今回の林野火災現場でも、緊急消防援助隊が持ち込み、広域の監視などに用いたが、より積極的な活用を掲げる。
 前回の検討会では、消防庁などによる火災原因の調査結果(速報)や延焼拡大要因の考察が示された。局所的な強風の中、赤崎町合足の火元付近での激しい燃焼から飛び火が綾里湾対岸にも及び、多くの家屋が被災した綾里の港地域では飛び火が起因となったことが明らかになっている。
 このほか、消火活動には迅速な対応が求められた中、配備している通信機器の不足に加え、一部地域は不感地帯だったため、無線機や携帯電話が使用できず、情報伝達に支障が生じた状況も指摘。不感地帯に対応した訓練や、衛星通信機器も活用した情報伝達の充実も見据える。
 消防体制に関しては「現場の状況に応じて無限水利の活用や中継送水の迅速な対応、早期の退避判断による安全確保といった対応は、地元を熟知し、過去の火災を教訓に日頃から実施している訓練が生かされた」と総括。半面、対応できる消防団員には限界があることや火点が点在したことによる統制の難しさにも触れ、情報収集できるドローンの操縦技能向上も方策例として示した。
 今検討会で示された方向性では、「一般的な傾向」として「林野火災の出火原因の大半が人為的な要因」と記述したが、今回の出火原因については、これまでと同様に「調査中」としている。
 次回は6月下旬の開催を見据えて調整。月1回ペースで会議を続け、今後取り組むべき火災予防や消防活動、消防体制充実強化などは今夏の取りまとめを目指す。