課題解決へ財政措置充実を 大規模林野火災の施策拡充など県に要望 必要施策「諸制度で対応しきれない」
令和7年5月22日付 1面

大船渡市は21日、大規模林野火災の施策拡充を求める要望書を、達増拓也知事に提出した。これまでの支援措置に感謝を寄せる一方、被害分野が広範囲に及び、東日本大震災からの再建途上にある被災者もいるほか、再建・再生に要する費用も高騰傾向にある中で「必要とされる施策は、諸制度では対応しきれない、多岐にわたるもの」と指摘。暮らしの再建、なりわいの再生、森林復旧各分野の課題を挙げながら、さらなる補正予算措置をはじめ財政支援の充実などを訴えた。(佐藤 壮)
要望は盛岡市の県庁で行われ、市側は渕上清市長や伊藤力也市議会議長、藤枝修副市長、各部長らが出席。県側は達増知事や、ふるさと振興部の村上宏治部長、復興防災部の大畑光宏部長らが対応した。
渕上市長は、応急仮設住宅の整備や災害廃棄物の処理に加え、中小企業被災資産復旧緊急対策費をはじめとした補正予算措置について「大いに勇気づけられている」と感謝を示した。
一方、住宅や事業用施設・資機材の焼損被害に加え、事業活動の中断に伴う損害に触れ、幅広い分野への影響を指摘。延焼地区は震災でも被災し、大規模林野火災の再建・再生に要する費用が高騰傾向にある状況も示しながら「必要とされる施策は、諸制度では対応しきれない、多岐にわたるもの」と述べた。書面では、今後行われる治山事業等に対し、地元事業者への優先発注にも配慮を求めた。
要望は▽暮らしの再建▽なりわいの再生等▽森林等の早期復旧──の3項目。分野別の施策に加え、現状課題も示しながら、理解を求めた。
暮らしの再建では、住宅をはじめ生活基盤の復旧に対する支援を強調。公費解体など災害等廃棄物処理事業や住宅再建・補修に対する財政支援措置に加え、再建時の合併処理浄化槽の設置に関する予算確保、テレビ共同受信施設に対する災害復旧事業の創設、被災児童生徒就学支援等事業の柔軟な運用を要望した。
なりわい再生では、被害分野が広範囲に及び、複合的な要因も絡む中、多面的な支援の重要性を掲げる。被災事業者に対する経済的支援・雇用維持支援に加え、養殖業の加工機械や焼損した農業用機械の復旧整備に向けた支援措置を求めた。
さらに、被災した林業機械の復旧を見据えた国の林業・木材産業循環成長対策事業へのかさ上げ補助のほか、自然公園施設の早期復旧整備も掲げる。
森林の早期復旧に向けては「延焼範囲・箇所は広大かつ急峻で、森林災害復旧事業の事業期間内の完了や市の財政負担の軽減が大きな課題」としている。さらに、土砂流出や被害木の倒木の危険性が高まり、集落や沿道など2次被害防止への応急的な対応が求められている状況も訴えた。焼損した被害木の伐採及び処理にかかる補助事業への財政支援措置も挙げる。
同席した佐々木茂光県議は「東日本大震災から日常を取り戻した段階で、また災害を受けた。これまでにない支援を掲げた知事の考えをしっかり踏まえた対応を」、千葉盛県議は「各分野、各部署で対応しているが、復興防災部があるので、取りまとめをしながら分かりやすい対応を。森林復旧は、県の役割が重要になる」と語った。
達増知事は「非常に重要な事項。補正予算編成や県からの政府要望に反映したい」と述べ、市などとの連携強化を誓った。
要望を終え、渕上市長は「第一段階の支援はできているが、状況は日々変わっている。スピード感を持って対応していく」と記者団に語った。農林水産分野の課題が山積する中、江藤拓農林水産大臣が辞任したことへの所感を問われると、「私がコメントする立場にはない」と答えた。
伊藤議長は「知事が補正対応にも言及されたのは、ありがたい。若手漁業者がワカメボイル施設の再建に向けて取り組んでいるが、金額が大きく、今後に迷いが生じている。意欲を失わないような形で迅速な補助が重要であり、国、県、市との連携で救済してほしい」と、さらなる支援充実に期待を込めた。