森林復旧造林135㌶計画 大規模林野火災の林地再生対策協で市が示す 私有林所有者に意向調査実施へ
令和7年5月23日付 1面

大船渡市大規模林野火災に伴う第1回林地再生対策協議会は22日、市役所で開かれた。被災森林面積は調査中ながら、2月19日に三陸町綾里で出火した火災分も含め約3400㌶に及び、補助事業の対象となる人工林は約1700㌶。市側は激甚災害指定を受け、県を通じて国に提出した森林復旧に関する計画概要書の内容を示した。令和10年度までの跡地造林は135㌶で、今月下旬以降、私有林所有者の意向調査を行う。被災人工林と造林計画の面積に大きな開きがある中、市は作業規模拡大や計画期間延長を目指しながら、今後さらに追加したい考えも示した。(佐藤 壮)
林地再生対策協議会は、大規模林野火災を受け、市が先月末に設置。委員は市、県、林野庁、県森林組合連合会、気仙地方森林組合の各関係者で構成し、この日はオブザーバーも含め10人が出席した。
会長を務める山岸健悦郎市農林水産部長は「激甚災害指定を受け、補助事業を活用しながら再生に取り組む。忌憚のない意見を」と述べた。
協議では、森林復旧事業に関し、事務局の市側が説明。被害状況では、延焼範囲に加え、所有者形態や樹種別の面積を示した=別掲参照。2月19日に綾里田浜下で発生した林野火災も含め、3月28日に国の激甚指定を受けている。
適用される補助事業は、人工林約1700㌶が対象。負担割合は国が2分の1、県が6分の1、市が3分の1だが、特別交付税措置などにより、実質的な市負担は10分の1となる。被害木などの伐採・搬出、伐採跡地の造林(シカ食害対策を含む)、森林作業道開設などを行う。
10年度までを期間とする森林災害復旧の計画概要書によると、被害木の整理(7年度~9年度)は125㌶で、事業費は4億4163万円。跡地造林(8年度~10年度)は135㌶で、事業費は5億1800万円となっている。所有者が個人的に被害木の整理を行うことなども想定し、跡地造林よりも面積が10㌶少なくしているという。
今月下旬以降に、数百人以上と見込まれる私有林所有者に対し、復旧を進めるかなどの意向調査を行う。復旧計画の策定や国への交付申請などを経て、年度内の復旧事業着手を見据える。
所有者に対して、費用負担は求めない。一方、復旧面積が増えれば、市の負担額が大きくなるため、財源確保が課題になる。
被災人工林に対し計画面積は1割にも満たず、委員から「復旧事業以外の対応は」との声も。市側は県の治山、砂防事業に言及したほか、事業期間の延長や財政負担軽減の要望も行う方針を示した。委員間では、ほぼ同様の補助率となっている通常の森林整備事業活用も話題に上がった。
「早く切ってほしい」との希望も予想される中、市側は意向調査後に地域説明会も開く考えを示した。委員からは「焼損した被災木は価値が低減していく中、利用できる木は利用が望ましい」とし、所有者の意向に沿った対応の重要性を挙げる声も出た。
協議会終了後、記者団に対して山岸部長は「復旧面積については、森林組合等と相談して対応できる分として調整したもの。1年間で50㌶程度ということだったので、概要書には『できるもの』として反映した」と説明。追加に向けて、事業期間の延長を要望するほか、作業体制の増強に向け、県内をはじめ関係団体の協力を求めていくことも検討する。
次回は7月の開催を見込み、森林整備の方向性や整備区域などを協議する。協議会の中に連絡会も設け、火災状況調査や森林所有者の特定、意向把握などに関する検討を進める。
委員、オブザーバー次の通り。
▽委員=山岸健悦郎(市農林水産部長)高芝俊雄(県農林水産部森林整備課総括課長)小川健雄(同部森林保全課総括課長)髙橋真紀(県沿岸広域振興局農林部大船渡農林振興センター所長)金晃弘(東北森林管理局三陸中部森林管理署長)工藤亘(県森林組合連合会専務付参与)千葉信夫(気仙地方森林組合代表理事組合長)
▽オブザーバー=酒井俊英(林野庁森林整備部整備課課長補佐)平田実(三陸復興国立公園管理事務所大船渡管理官事務所自然保護官補佐)森秀紀(森林研究・整備機構森林整備センター東北北海道整備局上席企画役)