耕畜連携推進を 高機能バイオ炭 実証・普及本格化へ

▲ 世田米地内に建設された宙炭の製造プラント

 養鶏業が盛んな住田町で、「高機能バイオ炭」(宙炭)の実証試験や普及への動きが本格化している。同町で製造された鶏ふんを主原料とするバイオ炭に微生物を付着させて培養した宙炭を圃場に散布し、土壌改良への効果などを検証する試み。実証2年目を迎えた本年度は、宙炭の製造・販売を手がける㈱TOWING(愛知県)が町内に製造プラントを建設。今後、プラントで製造された宙炭を町内の圃場で使用しながら効果を確認し、普及を図りながら耕畜連携を推進していく。(清水辰彦)

 

 バイオ炭は、もみ殻や家畜のふんなどを炭にしたもの。TOWINGでは、バイオ炭に微生物を定着させた土壌改良剤「宙炭」を開発して販売している。
 この宙炭を土に混ぜ、野菜くずや落ち葉などの有機肥料を加えると、微生物がそれらを効率よく分解して栄養をつくり、豊かな土ができる。通常は3~5年かかっていた農地の改良を、1カ月ほどに短縮することが可能で、遊休農地の復活にも効果が期待される。
 宙炭は、本来であれば廃棄・焼却される植物の残りかす、家畜のふん、下水汚泥などを材料とするため、焼却による二酸化炭素の排出量を減らすことができる。また、材料を炭化させていることから、その性質上、炭素の固定や吸収効果にも期待できるため、J─クレジット発行の対象となる。
 J─クレジット制度は、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証し、企業などとの間で売買できる形態にしたもの。
 同町での宙炭を使った実証試験もJ─クレジット発行対象になるといい、町は将来的には高機能バイオ炭を用いて農業を展開する事業者のクレジット売却による収益確保も見据える。
 同町ではバイオ炭の原料となる鶏ふんが多く排出されており、町内でも鶏ふん炭が製造され、農業で活用されている。
 町では令和5年度から、全農やTOWING、県農業改良普及センターと意見交換を重ね、宙炭の実証試験の準備を進めてきた。6年度は、町内農業者の協力を得て宙炭を用いた栽培と従来の農法による栽培を行い、その結果、排水性や保水性、通気性など土壌改良効果が確認されたという。
 TOWINGは世田米地内に製造プラントを整備し、今年4月から試験的に稼働している。それに先だって3月25日には同社と町、上有住に鶏糞炭化処理工場を構える㈲気仙環境保全、JAおおふなと、JA全農いわて、JA岩手県信連の6者が包括的連携協定を締結。協定に基づいて▽住田町の宙炭製造プラントの設置運用、鶏ふん炭を活用した宙炭の製品化▽農地への実証導入試験の提案・推進▽宙炭由来のカーボンクレジットの創出や販売▽単位農協の組合員等に対する宙炭の効果的かつ持続的な普及推進に向けた施策検討──を進める。
 本年度は町内の5カ所で実証試験を展開予定で、町は「農業活性化のため、他にはない、住田ならではの資材として広がっていけば」と期待。TOWINGは「県内生産者への宙炭普及を目指す実証試験・流通はもとより、宙炭の農地利用によって創出するカーボンクレジットの発行・販売に取り組み、将来的には宙炭を利用して栽培した作物の高付加価値販売による新たなマーケット創出も目指す」としている。