今年もおいしい一杯に 気仙茶の会が摘み取り作業 完成に期待込めて JAでは製造がピークに(別写真あり)

▲ 気仙茶の会が茶摘みを行い、参加者らが一番茶を収穫

 気仙では、初夏の風物詩とされる新茶の収穫や加工作業が行われている。24日には、陸前高田市の「北限の茶を守る気仙茶の会」(菊池司会長)が米崎町内の茶畑で茶摘みを展開。会員や地域住民らが〝一番茶〟となる柔らかな新芽を収穫し、気仙茶の完成に期待を込めた。また、大船渡市農業協同組合(猪股岩夫組合長、JAおおふなと)が運営する同町の製茶工場は製造作業のピークを迎え、職員らが気仙両市で収穫された茶葉をおいしい一杯に仕上げようと汗を流している。

 

 気仙は300年以上前から茶畑があり、明治・大正時代には大船渡、陸前高田両市で製茶や出荷が盛んだったとされる。無農薬で育った気仙茶は、茶本来の渋みと苦みがある一方、飲んだ後に甘みが感じられる素朴な味が特徴という。
 北限の茶を守る気仙茶の会は、気仙の茶文化を守ろうと平成24年に発足。今年の収穫は、米崎町の菊池勉さん(87)宅にある約4㌃の茶畑で行われた。
 会員や地域住民ら約20人が参加。菊池会長(76)は、「若い人にも気仙地方の茶の歴史を知ってもらい、後世につながる気仙茶にしていきたい」とあいさつした。
 参加者らは、明るい緑色に輝く柔らかい新芽を手摘みで収穫。新茶の味に期待を込めた。
 菊池会長によると、茶葉の成長は良好だという。収穫した茶葉はJAの製茶工場で加工後、6月29日(日)に予定する「新茶を楽しむ会」で味わうほか、市内での販売も見据える。
 大船渡町の30代女性は、「茶摘みをしてみると、とても貴重なものをいただいているという実感が湧く。自分が摘んだ茶葉がお茶になるのが楽しみ」と笑顔。
 気仙町の佐々木陽太郎さん(39)は「勤務するホテルで地元のお茶を出したいと思っていたところ、気仙茶の存在を知った。地元食材を楽しんでくれるお客さんが多いので、気仙茶も広め、お客さんに喜んでもらいたい」と話していた。

JAの製茶工場では加工作業がピークに

 気仙茶を加工するJAの製茶工場では、22日に気仙両市からの茶葉の受け入れがスタート。工場内には爽やかな茶の香りが漂う。
 入荷した茶葉は蒸して冷ましたあと、攪拌、もみ込み、乾燥を経て焙煎し、再び乾燥、ふるいがけなどを経て袋詰めする。このうち、焙煎は専用機械に茶葉を入れ、100度で熱する。職員らは茶葉を手にとって乾燥具合などを確認しながら、40分余りにわたって焙煎作業を続けた。
 市農協によると、今年の事前調査による茶葉の入荷量は約150㌔と、前年の実績から約30㌔減る見込み。工場への入荷量は年々減少傾向にあるという。
 それでも、気仙の歴史をつなぐ農産物であるため、職員らは経験や知識を生かしながら、おいしい気仙茶を目指していた。