新たな暮らし ここから 大船渡市大規模林野火災 あす発災3カ月 綾里の建設型応急仮設住宅も入居開始(別写真あり)

▲ 仮設住宅に生活家電などを運ぶピースウィンズ・ジャパンの関係者

 大船渡市大規模林野火災の発災から26日で3カ月を迎える中、三陸町綾里の旧綾里中グラウンドに整備された被災者向けの建設型応急仮設住宅で24日、入居が始まった。長期間にわたり避難所などに身を寄せてきた被災者が荷物を運び入れ、「仮の住まい」ではあるものの、木造空間での新たな暮らしの始まりに笑顔を見せた。支援団体による家電の提供に加え、市社会福祉協議会のスタッフが入居者と会話を交わすなど、生活再建に向けた交流も広がった。(佐藤 壮)

 

 23日に市役所で鍵の引き渡しが行われ、入居を予定している19世帯すべてが受け取った。24日は午前から各住戸で引っ越し作業が行われ、午後に入ると、午前に綾里小の運動会に参加していた家族が姿を見せ、鍵を開けて部屋に入り、笑顔を交わした。
 綾里の石浜地域で被災し、綾姫ホールで避難生活を送ってきた泉惠さん(45)は、家族4人で仮設住宅内に入った。「家族で『きょうからここで寝よう』と決めてきた。やっと、ほっとできる場所ができたという感じ。毎日、お風呂のことが気がかりだったので、そこから解放されるのもうれしい」と話した。石浜での住宅再建を見据える。

市社会福祉協議会による巡回も

 仮設団地内ではこの日、引っ越し作業のサポートに向けたボランティアの姿も。車両などから荷物を運び入れる家族らに声をかけて手伝い、新たな生活への移行を支えた。
 NPO法人ピースウィンズ・ジャパンによる生活家電や棚の支援も行われた。旧綾里中の体育館内で、事前に申し込んでいた家電を確認し、スタッフが各戸に直接運び込んだ。
 支援品は▽除湿機▽加湿空気清浄機▽石油ファンヒーター▽こたつセット▽ホットプレート▽ドライヤー▽掃除機▽扇風機──などで、事前に受け付けた。テーブルとしても日常的に利用できるこたつセットや、掃除機、扇風機などの希望が多かったという。
 説明会の段階から被災者に向き合ってきた同法人事務局スタッフの二宮真弓さんは「申し込みの前から、皆さんに喜んでいただいていた。きょうの方が、表情がより柔らかくなっているような感じがした」と語り、支援品を手にする入居者の姿に目を細めていた。
 また、市社会福祉協議会のスタッフは各戸を回り、引っ越し作業が落ち着いた住民に声をかけ、玄関先で笑顔を交わした。安心して暮らす地域づくりに向けた取り組みも、少しずつ動き出した。
 県や市は、避難生活の解消と早期再建に向け、被災した赤崎町外口の16世帯、綾里の46世帯に対し、仮設住宅の提供を進めてきた。建設型は3月10日、市が県に対して整備を要請し、赤崎町の旧蛸ノ浦小と旧綾里中の両グラウンド2カ所で建設に着手した。
 いずれも、木造の長屋建て。建設戸数は蛸ノ浦が7戸で、綾里が26戸。間取りは2Kと3Kに加え、家族が多い世帯向けに2Kと2K、3Kと2Kを組み合わせた形も確保した。入居戸数は蛸ノ浦が7戸、綾里が19戸となっている。蛸ノ浦では、17日に入居が始まった。
 公営住宅やみなし仮設への入居もすでに完了しており、綾姫ホールと県立福祉の里センターに開設されている避難所の運営終了も見えてきた。発災から、あす26日で3カ月を迎え、復旧・復興に向けた動きは新たなステージに入りつつある。
 大規模林野火災は2月26日に発生。避難指示は、同日から3月1日にかけて順次拡大し、対象は三陸町綾里の全域と赤崎町の蛸ノ浦地区、中赤崎地域に加え、三陸町越喜来の甫嶺地域にも及び、総計で市民の10%超に上る1896世帯4596人となった。
 罹災証明書などに基づく5月14日現在の被災棟数は、住家90棟(全壊54棟)、住家以外136棟(同121棟)で計226棟となっており、農林業や水産業の施設にも甚大な被害を及ぼした。延焼面積は平成以降の林野火災では国内最大となる3370㌶に及んだだけに、林地再生に向けた課題も山積。住宅再建やなりわい再生、森林復旧に向けて、息の長い取り組みや支援が求められる。